<ねぇゴローちゃん!腹話術師の旅日記>尾道のあしながおじさん 施設に笑いをプレゼント

2021年11月18日 07時33分

全国で公演活動を続けるしろたにまもるさんと人形のゴローちゃん

 「尾道に来ていただけませんか。恵まれない子どもたちに笑いをプレゼントしたいのです」
 こんな電話があったのは、二〇一六年九月のことでした。
 私は中学生の時読んだ「あしながおじさん」の感動を思い起こしたのでした。
 NHKラジオ深夜便『明日へのことば』に二度出演したことがありますが、それを聞いて思い立ったという人でした。「恵まれない子どもたちに腹話術の贈り物をしたい、交通費とギャラは私が持つから」というのです。それまでは、毎年クリスマスプレゼントに物を贈っていたそうです。
 訪問先は二つの福祉施設でした。一つは、何らかの事情で親と暮らすことができない三歳から十八歳までの子どもたちが預けられている養護施設でした。中学生や高校生らしい子の膝の上に幼い子どもが座ってゴローちゃんを見てくれているのです。子どもたちは転げ回るように喜んでくれたのですが、本来ならその幼い子どもたちは自分のお父さんか、お母さんの膝の上でなければならないのに、と思うと演じていて涙が出そうになりました。
 施設の人の話では、異なる年齢の子どもたちからなる班をいくつか作り、班ごとにそれぞれの部屋で毎日を過ごしているとのことでした。小さい子の面倒を中高生のお兄ちゃん、お姉ちゃんがみているのだそうです。そして昼間はその施設から近くの保育園や学校に通っているとのことでした。
 もう一つは、夫の暴力から逃れて母子で過ごしているDVシェルターでした。ここでも「子どもたちがこんなに喜ぶのは初めてですよ」と施設長が言うほどでした。
 上演後、帰ろうとすると子どもたちが通せんぼしてゴローちゃんを帰そうとしないのです。「また来るから」と言葉を濁すと、「絶対だよ」と念を押すのです。
 私を呼んでくれた「あしながおじさん」は、とうとう約束させられ、翌年、また訪れたのでした。(しろたにまもる=寄稿)

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