<社説>国産旅客機 展望を速やかに示せ

2021年11月18日 07時49分
 三菱重工業が国産旅客機「スペースジェット」(SJ)=写真=の開発を凍結してから一年が過ぎた。商用化に必要な認証(TC)取得作業は続けるという説明だったが、現場から伝わる様子は“店じまい”するかのような動きばかり。経営陣は今後の行く末について迅速に展望を示すべきだ。
 先日、同社が発表した二〇二一年九月中間連結決算は事業損益が二百六十二億円の黒字(前年同期は五百八十六億円の赤字)だった。SJの開発費の負担が無くなり、八百億円規模を浮かせたのが増益要因となったという。
 決算記者会見で、泉沢清次社長は「経営環境は改善傾向にある」と語った。それなら、SJの開発を復活させるのはいつか、はたまたこのまま止めてしまうのか説明するべきだったろうが、一切語らなかった。
 六度にも及んだ度重なる納入遅延の後、二〇年十月に突如凍結されたSJ事業。その時点までに開発費は多額の税金も含め一兆円余りに上っていた。
 その後、予算は従来の二十分の一の年間約七十億円に抑えられ、開発要員も大幅に減った。従業員は「飛行機を飛ばして新しいデータを取れず、やることがない」と明かす。唯一続けると言っていたTC取得作業すら停滞している。
 自動車の部品は三万点といわれるのに対し、航空機は百万点いるとされる。部品の数が多ければ、携わるサプライヤーの数も多い。特に中部地方では、高度な技術を持つ中小企業が多いこともあり、航空機製造業の一大集積地として成長させていくことを、国や自治体も推進していた。
 SJの量産化に期待し、新規投資に踏み切った企業も少なくない。突然凍結された上、説明はほぼなく、航空機とは別の分野の新規事業に舵(かじ)を切った企業もある。
 コロナ禍で縮んだ航空機市場だが、最大規模の米国では国内移動が盛んになり、回復しつつある。収束後は一気にSJが活躍できる分野が広がる。もし復活を期するなら、適切なタイミングで凍結を解かないと、年々難しくなるだけだろう。

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