<新型コロナ>感染まん延と経済打撃懸念 首相、リスク両にらみ

2020年3月29日 02時00分
 安倍晋三首相が二十八日の記者会見で、改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく緊急事態宣言を発令する状況ではなく「ぎりぎり持ちこたえている」と強調したのは、経済に与える深刻な打撃を懸念しているためだ。だが都市部を中心に新たな感染者の増加に歯止めがかからない。オーバーシュート(爆発的患者急増)に備え、政府は発令を視野に入れた経済対策に着手した。 (上野実輝彦)
 「制御できない感染の連鎖が生じれば、爆発的な感染拡大が発生しかねない」。首相は会見でそう強調した。それでも「ぎりぎり」にとどめたのは「緊急事態宣言を発令すれば経済が止まってしまう」(政権幹部)との危機感からだ。
 発令されれば、対象となった都道府県の知事が外出自粛の要請や、百貨店など大人数が集まる施設の使用制限、学校の使用制限を要請・指示することなどができるようになる。一部を除き罰則はないとはいえ、法律に基づく措置は事実上の強制力を持つとの見方もある。
 政府が二十六日に発表した月例経済報告では、感染拡大による経済情勢悪化を受け、国内の景気判断から「回復」の表現を六年九カ月ぶりに削除した。緊急事態宣言が発令されれば景気低迷に追い打ちをかけ、国民生活に深刻な影響が出かねない。
 だが、東京都の新たな感染者は二十五日から三日連続で四十人以上、二十八日には六十人を超えた。小池百合子知事は既に「ロックダウン(都市封鎖)」に言及している。首相周辺から「人数が大きく増えていけば、緊急事態宣言も考えなければいけない」との声も上がり始めている。
 特措法では「国民の生命、健康に重大な被害を与える恐れがある」「全国的で急速なまん延により国民生活や経済に甚大な影響がある」との要件を満たせば首相が宣言を発令できる。西村康稔経済再生担当相は「生命、健康に重大な被害」には既に該当するとの考えを示している。
 首相は会見で、経済対策は緊急事態宣言を視野に入れていることを認め「最悪の事態も想定している。その時のための措置と言ってもいい」と語った。

◆基本的対処方針を 政府対策本部決定

 政府は二十八日、新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長・安倍晋三首相)の会合を首相官邸で開き、今後の対応の指針となる基本的対処方針を決定した。国内の感染爆発を回避するため、接触機会の低減を図ることなどを呼び掛けた。
 国と地方自治体、医療従事者などが取り組む指針として、(1)各地域でクラスター(感染者の小規模集団)を封じ込めて感染拡大の速度を抑制する(2)適切な医療提供で重症者と死亡者を最小限に食い止める(3)社会・経済機能への影響を最小限にとどめる-との原則を示した。
 国内の感染状況が改正特別措置法(新型コロナ特措法)上の「緊急事態」に該当するかに関しては「政府対策本部長(首相)が諮問委員会の意見を十分踏まえた上で、総合的に判断する」とした。一方、首相が緊急事態を宣言することで、都道府県知事が外出自粛やイベント中止を要請できる期間について、政府は「二十一日程度」とする方向で調整しているが、対処方針への明記は見送った。

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