低成長から抜け出せるか…岸田政権の経済対策、富裕層の課税強化からすり替わり

2021年11月20日 06時00分
 19日閣議決定された経済対策で、岸田文雄首相は「成長と分配の好循環を生み出していく」と説明するが、その具体的な道筋は見えない。新型コロナ禍で困窮する人への支援は必要だが、18歳以下への10万円相当の給付は合計年収が比較的高い世帯も対象となり、エコノミストからは「来年の参院選に向けたバラマキ色が強い」との批判も出ている。(森本智之)

岸田文雄首相

◆名目GDP成長、中国・米国と雲泥の差

 給付金はあくまで急場をしのぐための一過性の収入にしかならず、継続的な賃上げなどの分配にはつながらない。売り上げが急減した事業者への支援金も盛り込まれたが、コロナ禍と関係なく業績が芳しくない企業の経営を給付金で維持し続ければ、新しい事業が生まれにくくなる。経済官庁幹部は「いたずらに金を配れば将来の成長の芽を摘み、結果として分配のきっかけを奪う」と指摘する。

会社帰りのサラリーマンなどの姿が戻り始めたJR新橋駅周辺の繁華街=11月、東京・新橋で

 バブル崩壊後、日本は低成長が続く。国際通貨基金(IMF)によると、2020年の日本の名目国内総生産(GDP)は、30年前と比べ1.6倍にしか増えていない。中国の37.5倍、米国3.5倍などと比べると雲泥の差だ。安倍晋三元首相が打ち出した経済政策「アベノミクス」は金融緩和で株高を演出したが、低成長からは抜け出せなかった。
 低成長が続く限り、分配は困難な状況だ。経済協力開発機構(OECD)によると、米国の平均賃金はこの30年で1.5倍弱に増えたが、日本は横ばいの1.04倍にとどまっている。だが、岸田政権の経済対策では従来の政策の延長や拡充が目立ち、成長への起爆剤となるかは見通せない。
 大和証券の末広徹氏は「岸田政権の分配政策は当初、(既に見送られた)金融所得課税など富裕層らへの課税強化だった印象があるが、いつのまにか給付にすり替わった。財源を取るところから取らなければ分配にならない」と指摘する。

◆国際的に異例な存在に

 岸田首相が自民党総裁選の頃から訴えた数十兆円規模の経済対策は、過去最大の55兆7000億円まで膨らんだ。
 欧米など主要国では、コロナ対策で傷んだ財政を立て直すため、財政支出を少しずつ縮小しながら、増税を含めた財源確保の具体策を打ち出し始めている。たとえば、米国では成長戦略として子育てや教育投資を進める一方、大企業や富裕層への課税強化で財源の確保を検討している。コロナ禍で拡大した経済格差を是正し、所得の再分配を進める狙いもある。
 一方、岸田政権は金融所得課税の当面の見送りを決め、感染者数が減少する中でむしろ財政支出を拡大。国際的に異例な存在となりつつある。
 政府はコロナでさらに傷ついた日本の財政をどう立て直すかの議論を始めようとしない。東日本大震災の際には巨額の財政支出と復興増税をセットで議論し、所得税や住民税の臨時増税を決めた。だが経済官庁幹部は「(コロナ対応は)支出の規模が違いすぎ、震災時のような対応で何とかなる話ではない」と背景を説明する。参院選を来年に控え、国民負担につながりかねない財源確保の議論は政治的リスクが大きく、政界ではタブー視されているのが現状だ。

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