<食卓ものがたり>手作業で守る絶妙食感 レンコン(静岡市)   

2021年11月20日 06時48分

「あさはた蓮根」の収穫をする村上四郎さん。丁寧な手作業で掘り出していく=静岡市で

 粘り気のある真っ黒の土をクワで少しずつ掘り進めていく。深さ約六十センチ、村上四郎さん(73)の手が止まり、土の中のレンコンの芽が見えた。伸びている方向を見極め、少しずつ周りの土をクワと手で取り除いて土から離し、両手で持ち上げた。直径約十センチ、長さは一メートルにも。節目を鎌で切ると、粘りのある白い糸を引いた。「ほくほく、もちもちという食感がいい。全国にレンコンの産地はあるが、味には自信があるよ」。村上さんは顔をほころばせた。
 JR静岡駅から北に約五キロ。麻機(あさはた)沼の周辺はかつて見渡すほどのレンコン田が広がっていたという。JA静岡市の担当者によると、ブランド「あさはた蓮根(れんこん)」の生産者でつくる委員会の会員は十二人で、作付面積は約〇・五ヘクタール。年間収穫量は約五トンで、今や「幻のレンコン」とも言われる。穴の開いた姿は「先を見通す」と、縁起物として正月のおせち料理に欠かせない。
 NPO法人「麻機湿原を保全する会」がまとめたガイドブックによると、徳川家康によって駿府(すんぷ)城が造られるまでは安倍川の水も流れ込み、低地を形作っていた。家康が好んで食べたと伝わっており、遅くとも江戸時代初めから栽培は始まっていたとみられる。
 「粘土質だから水持ちがいい。栽培には最適」と村上さん。品種は「備中種」。種として使うレンコンを土の中に残し、豊富な地下水で水田のように満たす。夏には青々とした大きな葉を持つ茎が高さ二メートルにも育つ。収穫期の十月までには水を落とし、茎を切る。
 収穫は年明けまで続く。雨水がたまるとレンコンの場所が分からないから、晴天が二、三日続いた後が収穫日の条件という。傷つけないため機械は入れない。
 村上さんは会社を六十三歳で定年退職してからこの仕事を継いだ。約三十アールの畑から年間約五百キロを収穫する。長靴が泥に埋まりながらもクワと鎌を使った丁寧な手作業で掘り出す重労働だが、「収穫期が長いので自分のペースで掘っていけるのがいい」と、伝統の名産を支える。
 文・五十住和樹/写真・立浪基博

◆買う

 静岡のお土産品としてJA静岡市が販売している「麻機れんこん羊羹(ようかん)」=写真=は、自慢の食感が和菓子で味わえる。名産のレンコンをじっくり蜜に漬け込んで刻んだものをようかんで包んだ。JA静岡市の店舗や、インターネットのブランドショップ「じまん館」で購入できる。3種類の9個入りが2980円(送料込みのネット販売価格。一部地域は追加送料が必要)。問い合わせはじまん館=電054(262)8824。

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