マジョリティ男性にとって まっとうさとは何か 杉田俊介著

2021年11月21日 07時00分

◆男女間に「同意より異論を」
[評]佐藤直樹(九州工業大名誉教授)

 もう耳にタコができているかもしれないが、日本のジェンダーギャップ指数はなんと百五十六カ国中百二十位。だが、自戒をこめて言いたいが、大多数の男性はまるで実感がないのではないか。女性は自分が女性であることを日々意識させられるが、多数派の男性は自分が男性であることを、それほど強く意識しなくとも暮らしていけるからだ。
 著者は、いま#MeToo運動など時代の大波にさらされ、その居心地の悪さに、困惑し、戸惑っている、「迷える多数派の男たちのためのまっとうな教科書」が必要だという。それを実現した本書は、これまでのフェミニズムをめぐる様々(さまざま)な論争や、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『ズートピア』『ジョーカー』などの映画作品を素材に、男性たちがフェミニズムから何を学ぶべきかを、網羅的に整理し丁寧に解読する。
 論点は多岐にわたるが、現在とりわけ問題なのは、近年のグローバル化と多文化主義化によって、ジェンダー、人種・民族、障害、経済階級などの差別が交差し複合化したことで、男性の側で、自分も被害者であるとの「剥奪(はくだつ)感」が強まったことだ。被害女性を「勝ち組の典型」とみなし殺害しようとした八月の「小田急線無差別刺傷事件」が象徴的だが、それが容易に女性への攻撃に転化し、アンチフェミニズム的な気分の拡大を招いている。
 ではどうすればよいのか。特筆すべきは、「一九六〇年代〜七〇年代のラディカルフェミニズムの原点(非対称な敵対性の場所)に立ち還(かえ)るべきではないか」との提案だ。これは、男性と女性の間には圧倒的な非対称性が存在し、男性には加害者性の自覚が必要だということだ。
 求められているのは、#MeToo運動への訳知り顔の共感や賛同ではない。大事なのは、何よりもまず男性自身が男性問題を問い直してゆくこと。そして、男性と女性の間での、「同意ではなくむしろ異論を。対話ではなく論争を。友愛ではなく敵対を待ち望」む態度だという。いま自分の立ち位置に迷うマジョリティ男性に待望の一冊である。
(集英社新書・1012円)
1975年生まれ。批評家。著書『非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か』など。

◆もう1冊

武田砂鉄著『マチズモを削り取れ』(集英社)。日本が、いかにとんでもない男尊女卑の国であるかがよーく分かる。

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