<首都残景>(30)学び見守る古木

2021年11月21日 06時54分

成蹊学園の正門へ向け連なるケヤキ並木。樹齢100年以上の巨樹が晩秋の夕日を浴びて黄金色に染まる=いずれも武蔵野市で

 JR吉祥寺の駅に降り立ち、北へにぎやかな街並みを抜けて十五分ほど歩くと成蹊学園に着く。まず目を奪われるのが樹齢百年を超えるケヤキの並木道だ。
 五日市街道から本館まで、さらに学園正門から中学、高校に至る道筋と約六百メートルにわたって静かな木漏れ日の道を形成している。
 大正自由教育の旗手、中村春二によって設立された成蹊学園は一九二四年に池袋から吉祥寺に移転。このとき植えた若木が成長し、今では小中高大の通学路を彩る学園のシンボルとなった。興味深いのは、憩いの場というだけではなく、学びの場としても活用されている点だ。

ドローンで上空から撮影したケヤキ並木。奥が学園のキャンパス。敷地内には150本のケヤキが立つ

 並木は美しい一方で管理に手間や費用がかかる。例えば一日の重量二トンにもなる落ち葉の処理だ。その落ち葉を資源に変えよう。さらにその過程を環境を守るサステナビリティー(持続可能性)教育の場としよう。そんな発想で、「けやき循環プロジェクト」が二〇一七年にスタートした。
 落ち葉から堆肥をつくる方法を学ぶ授業もそのひとつ。小学五年生のクラスを見せてもらって、内容が濃密なのに驚かされた。

学園の敷地で集めたケヤキの落ち葉を使い堆肥を作る成蹊小の児童たち。元気いっぱいで力を合わせる

 まず材料の収集。子どもたちは、ケヤキ並木の落ち葉を拾い、馬術部の厩舎(きゅうしゃ)から馬ふんも集めた。三鷹市で農園を営む鴨志田純さん(35)の指導で、そうした材料を適当な比率と手順で混ぜ合わせ、仕込んでいく。
 堆肥は上手に発酵させると腐敗臭も発しない。逆に失敗すると鼻がもげそうになる。サンプルを手にした子が「くさーい」と悲鳴を上げて、笑い声が起きた。
 「こうした本物に五感で触れる体験が大切」と担当の山本剛大教諭。
 学園の敷地内には畑もあり、小学生は完熟堆肥を使ってサツマイモ、大根などを育てている。作物は焼き芋や風呂吹き大根にして食べる。収穫し、調理し、味わうまでが授業だ。
 冬に向かうケヤキ並木が、そんな子どもたちの姿を見下ろしている。
文・坂本充孝 写真・戸上航一
ドローンからの映像はこちら
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