中国と台湾 どちらが優勢? TPP加入めぐり駆け引き激化

2021年11月22日 06時00分
 環太平洋連携協定(TPP)への加入申請をした中国と台湾の外交攻勢が活発化している。中国が加入すればTPPの圏域が拡大する利点がある一方、経済面の統制を強める中国の加入に反発が出ることも予想される。中台の対立が加盟国間の亀裂を招く恐れもあり、日本など加盟国は難しい対応を迫られそうだ。(北京・白山泉、中沢穣)

◆中国は経済規模、台湾は透明性アピール

 12日にあったアジア太平洋経済協力会議(APEC)のオンライン首脳会議は、中台がそれぞれ支持を訴える場となった。

中国の習近平国家主席=新華社提供、AP

 中国の習近平しゅうきんぺい国家主席は「高水準のアジア太平洋自由貿易区を早く建設するべきだ」と、経済規模の大きい中国がTPPに加入するメリットを強調。台湾からは蔡英文さいえいぶん総統の代理として半導体大手「台湾積体電路製造(TSMC)」の創業者、張忠謀ちょうちゅうぼう氏が出席し「台湾は透明性の高い市場経済であり、TPPの高い基準を満たす」と台湾こそが加入にふさわしいと訴えた。
 加入には全加盟国の承認が必要で、中国の申請は9月半ばで台湾より1週間早かった。中国は台湾の加入に反対しており、台湾の動向を察知してけん制したとの見方が強い。

◆「外圧利用し、国内改革」?

台湾のTPP加盟へ支持を訴える張忠謀氏=中央通信社・共同

 中国の加入を巡っては、共産党による統制強化が「自由、公正で開かれた市場」を重んじるTPPの趣旨と相いれないとの指摘がある。特に対応が難しそうなのが、結社の自由や労働者の権利を保障する法整備だ。中国では自発的な労働組合の結成は許されていない。国有企業への優遇措置や不透明な補助金支出などの改革も不可欠だ。
 このため中国も改革の努力をアピール。上海や海南省など20カ所以上に増やした自由貿易試験区で外国企業の投資を呼び込んできた。個人情報保護の法整備や、外国ドラマの違法配信も著作権を守る姿勢を示すために取り締まりを進めてきた。
 中国政府関係者は「TPPを外圧として利用し国内の改革を進めたい」と話す。

◆中台の間で問われる日本の手腕

 中国が加入すれば、域内の経済規模は2.5倍に拡大する。中国は習氏はじめ政権幹部が矢継ぎ早に加盟国幹部と会談や協議を行い、中国加入のメリットを説き、支持取り付けに躍起だ。一方で交渉が始まれば、中国は例外規定の適用を求める可能性が高く、適用を認めればTPPの開放水準は後退しかねない。
 中国側の発表によると、これまでにニュージーランドやマレーシア、シンガポール、メキシコ、チリが「歓迎」や「支持」を表明。中国の加入に慎重な日本やオーストラリアに圧力をかける狙いが透ける。ただ、ニュージーランド側の発表には支持を示す表現はなく、シンガポール政府の発表にはTPPへの言及すらない。
 今年のTPP議長国である日本は、台湾の加入申請に「歓迎」を表明した一方、中国には「ルールを満たせるか見極める」と慎重な立場を取る。自由主義陣営にある台湾と最大の貿易相手国の中国双方の加盟申請をどう取り扱うか岸田文雄首相の外交手腕が問われるが、まだ「中国側から日本に対して接触はない」(北京の外交筋)という。

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