「死のうと思ったが死にきれず…」京王線刺傷の容疑者 殺人未遂容疑で再逮捕へ

2021年11月22日 06時00分
 東京都調布市を走行中の京王線の電車内で起きた刺傷事件で、殺人未遂容疑で逮捕された服部恭太容疑者(25)が「長年死のうと思ってきたが死にきれなかった過去がある。大量殺人して死刑になりたかった」と供述していることが捜査関係者への取材で分かった。警視庁調布署捜査本部は、服部容疑者が乗客に火を付けて殺害しようとした疑いが強まったとして殺人未遂と現住建造物等放火の疑いで22日に再逮捕する。

床やシートが焼けた京王線の車両=10月31日、都内で(京王電鉄提供)

 捜査関係者によると、服部容疑者は10月31日午後8時ごろ、国領こくりょう駅付近を走行中の京王八王子発新宿行き特急電車の先頭から6両目で、都内の女性会社員(60)ら乗客15人に向かってペットボトルにいれたライターオイル3リットルをまき散らし、火の付いたライターを放り投げ、殺害しようとした疑いが持たれている。乗客4~5人にオイルがかかったが、体に燃え移った人はいなかった。車両の床約0.1平方メートルが焼けた。
 調布駅から乗車した服部容疑者は8両目に座っていた都内の男性(72)の胸をナイフで刺した後、6両目へ移動。事態に気付いて逃げる乗客を追い掛け、追い詰められて乗客が集まっていた5両目との連結部付近でオイルをまいた。火の勢いを強めるため、殺虫剤のスプレー缶も投げ入れたとみられる。
 オイルは上野の専門店などで約5リットルを購入。「人を燃やして殺そうと思った」と話しているという。刺された男性は意識が戻ったが重体のままで入院中。10代~60代の男女17人が軽傷を負った。
 服部容疑者は6月、3年間勤めた福岡市の携帯電話関連会社をトラブルで退職した。「仕事に失敗し、友人関係もうまくいかず死にたかった。自分では死ねないので、人が集まるハロウィーンの日の電車で2人以上殺して死刑になりたかった」と供述している。

◆孤立からの犯罪 「ただ話を聞いてあげるだけでもいい」

 「死にたい」という思いから事件を起こしたと供述している服部容疑者は、悩みを打ち明ける人がおらず孤独を深めていったとみられる。死を願う人にどう接すれば自殺や事件を防げるのか。防止対策に取り組む団体は「相手を受け止め、ただ話を聞いてあげるだけでいい」と助言する。
 悩みを電話で受け付ける認定NPO「国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター」(東京都新宿区)には、京王線事件の翌日から「私も同じように誰かを殺したい」との相談が複数寄せられた。2008年の秋葉原の無差別殺傷事件後も同様の相談があったという。
 相談員の村明子さんは「社会から孤立して怒りの行き場のない人が『死にたいが、1人で死ぬのは嫌だ』という気持ちから目の前にいる人に罰を与えようと思ってしまう」と分析する。
 村さんは「死に向かう人は特別ではない」と言いきる。少しのきっかけで人生の歯車が狂ってしまった人が多く、昨今のコロナ禍で生活が制限され、逃げ場がなくなった人もいるという。

◆「死にたい」人は「「よりよく生きたい」思いも抱える

 一方で「死にたい」という人は「よりよく生きたい」という思いも抱えていると指摘。「死への願望はなかなか消えないが、ただそばにいて、こちらも心配していることを伝えることで願望が薄まることもある」と助言する。
 都内で若者の自殺防止などに取り組むNPO法人「ライトリング」(豊島区)代表理事の石井綾華さん(32)も「相談してきた相手の話を最後まで聴き、アドバイスせず、本音を吐き出してもらうことが大事だ」と話す。自分で受け止められない場合は専門家の相談窓口を紹介し「どうだったか報告してね」と見守る姿勢を示すことが大切だという。
 一方、悩みを誰にも相談できず、思い詰める人は少なくない。石井さんは「いつもより元気がなかったり『どこか遠くへ行きたい』と遠回しに話す人もいる。サインに気付いたら『私のことを見てくれている人がいる』と思ってもらえるようなひと言や、SNSの返信が有効だ」と説明する。(天田優里、山田雄之)

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