東京古書組合が『百年史』刊行 「楽しそう」な歩み これからも

2021年11月22日 07時12分
 本の街・神保町をはじめ東京都内の古書店でつくる都古書籍商業協同組合が、発足から百年の歩みをまとめた『東京古書組合百年史』(八千円)を刊行した。時代の変化に伴う取り組みの歴史を多くの生の声を交えてたどり、詳細な記録もふんだんに盛り込んだ、貴重な一冊となっている。 (北爪三記)
 A5判、約六百八十ページ。ボリュームはあるものの、白地に彩り豊かな古書の写真があしらわれたカバーは、年史というより文芸書の風情を醸し出す。「組合員だけでなく、誰もが手に取って読めるものにしたいと考えました」。編纂(へんさん)委員長を務めた佐古田亮介さん(66)=写真=が振り返る。
 一九二〇(大正九)年に結成した組合は昨年、百周年を迎えた。加盟の古書店が東京古書会館(千代田区神田小川町)に本を持ち寄り、セリにかけて売買する市会(交換会)が活動の基本だ。インターネットの検索・販売サイト「日本の古本屋」も柱の一つ。約五百五十人の組合員がいる。
 本書は、十四人の編纂委員が毎月集まって話し合い、約三年がかりで完成させた。既に『五十年史』があったため、後半の五十年に重きを置いた。
 平成以降をたどる章では、平成に入って大型リサイクル店とインターネットという、業界にとって二つの「黒船」が来た、と編纂委員らが振り返る。こうした危機感が「日本の古本屋」誕生の契機だったとわかる。
 この章のタイトル「古本屋は儲(もう)かりそうではないが楽しそうである。」は、三十〜四十代の店主に実施したアンケート結果を基にした。「百年は到達点ではなく通過点。次につなげていかなくては。古本屋は隙間産業なので大もうけはないけど、しぶといんです」と佐古田さんは笑う。
 隔月発行を続ける組合の機関誌『古書月報』から、えりすぐりの寄稿をタイトルと寸評で紹介した章「見よ、古本屋の豊穣(ほうじょう)なる世界」は、個性豊かな店主陣をうかがわせる。フランス文学者の鹿島茂さんが執筆した章「鹿島流・古本屋はいかにして生き続けたか」や、店が多かった昭和六十二年と今年の立地状況を比較した「古本屋分布図」などもある。佐古田さんは「興味を持ったところから読んで、古書組合というものがあると知ってもらえたら」と話す。
 組合加盟店や「日本の古本屋」で販売中。『百年史』の制作過程や組合の歴史を紹介する「百年史展」も、十二月七日まで東京古書会館二階で開催している。日曜、祝日休館。入場無料。

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