海や人体にどう影響? 福島第一原発の「処理水」放出で東電が影響予測

2021年11月22日 09時30分
 東京電力は福島第一原発の汚染水を浄化処理した後の水について、海洋へ放出した場合の環境と人への影響予測をまとめた。17日公表の報告書では、海へ放出された放射性物質の影響は、漁をしたり泳いだりした際の外部被ばくと魚介類を食べた際の内部被ばくのいずれも「極めて軽微」としている。報告書のポイントを整理した。(小川慎一、小野沢健太)

◆海にはどう拡散?

 東電は汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化処理後に大量の海水で薄めて、原発から海底トンネルを通じて沖合約1キロ、水深約12メートルに造る放出口から流す計画を進めている。
 処理水を海水で薄めるのは、ALPSで除去できない放射性物質トリチウムの濃度を国の排出基準の40分の1「1リットル当たり1500ベクレル」未満にするためだ。
 放出されたトリチウムはどのように海で拡散するのか。東電は2014年と19年の気象と潮流などのデータを使い、1年間で放出する処理水に含まれるトリチウム総量を22兆ベクレルとしてシミュレーション。原発周辺海域の放射性物質の平均濃度が高くなった19年データの結果を示した。

◆濃度上昇は3キロ圏内

 海水に元々含まれるトリチウム濃度(一リットル当たり0.1~1ベクレル)より高くなる(1リットル当たり1~2ベクレル)のは、原発から2~3キロの範囲で、日常的に漁業が行われていないエリア内にほぼとどまる。海水より濃度が高くなる範囲が最も広がったとしても、原発の南北30キロの範囲内だという。
 海底の放出口の真上付近では1リットル当たり30ベクレル程度になるが、潮の流れで拡散し、すぐに海水と区別できないレベルになるという。東電によるシミュレーション結果の動画

◆人体への影響は?

 海に流された処理水は、人体にどれくらい影響を与えるのか。東電は、日常的に魚を食べる漁師をモデルにして影響の程度を調べた。
 モデルの漁師は1年の3分の1を原発を中心に南北10キロ、沖合10キロ圏内の海で漁をし、年間で500時間をその圏内の海岸で過ごした上、海で計96時間泳ぐ。さらにその圏内で取れた魚、貝やエビ、カニなど無脊椎動物(イカ、タコを除く)と海藻を平均的な摂取量(19年の厚生労働省国民健康・栄養調査報告に基づく)で毎日食べると仮定した。
 処理水の放射能濃度は、実測値がある3種類の処理水を前提とし、漁や遊泳による外部被ばく線量と、海水を取り込んだ魚介類や海藻を食べることによる内部被ばく線量を足し合わせた。

◆被ばく限度の1万分の1

 その結果、人体への影響が大きい放射性物質が多く残る処理水を放出した場合、一般人の年間被ばく限度(1ミリシーベルト)に比べて約1万分の1の被ばく線量になるという。濃度が低い処理水では、約6万分の1にとどまるとした。魚介類や海藻を毎日平均より多く食べても、被ばく線量は年間限度の約3千分の1から約1万6千分の1になると見込んだ。
 また、放射能濃度が法令で定めた放出基準の限度まである処理水を放出したケースの影響も試算した。この場合でも、モデルとなる漁師の被ばく線量は、年間限度の約2千分の1に収まるという。
 東電福島第一廃炉推進カンパニーの松本純一・ALPS処理水対策責任者は17日の記者会見で「限度に比べてはるかに小さい線量なので、人の健康や海の動植物に影響はほとんどないと思っている」と話した。

◆東電が12月18日午前0時まで意見募集

 東電は公表した「ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書(設計段階)」について12月18日午前0時まで、国内外から意見を募り、報告書を改定する際の参考にしたいとしている。
 意見は日本語か英語で、東電ウェブサイトの応募フォームからのみ受け付ける。電話やメール、ファクスでは受け付けない。
 応募フォームや報告書は、東電「処理水ポータルサイト」から。

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