感染から起きる臓器障害 急増する敗血症 初の実態調査、千葉大教授ら

2021年11月23日 07時46分
 今年九月に亡くなった作曲家のすぎやまこういちさんの死因であり、十月に米国のクリントン元大統領が入院した原因となった病気が「敗血症」だ。感染症に起因する重い臓器障害を指す。この敗血症の日本の患者、死者の数が、社会の高齢化に伴って急増していることが、全国実態調査で初めて明らかになった。
 感染症にかかると命にかかわる場合があることは誰もが知っている。その定義は二〇一六年に改訂され、医学的に明瞭になった。結論は「感染症に対する生体反応がコントロールできなくなり、自らの組織や臓器を傷害することで起きる、生命にかかわる状態」というものだ。
 実態調査を取りまとめた中田孝明千葉大教授(救急集中治療医学)=写真=によると、細菌やウイルスによって感染症が起きると、体の中ではそれらの病原体を排除しようと免疫機能が働く。だが、この機能が制御不能となって“暴走”すると、自らの組織や臓器を傷めてしまうことがある。それが敗血症の実態だという。
 今回の調査で中田さんらは、保険請求に基づき国内の入院患者の大半をカバーする診療データベース「DPC」を活用。医療機関が一〇〜一七年に登録した五千万人以上の入院患者から敗血症の患者を抽出し、患者の背景や感染の詳細、治療の経過などを分析した。
 その結果、入院患者のうち敗血症になった人は4%の約二百万人。そのうち約三十六万人が敗血症で亡くなっていた。
 年ごとの変化を追うと、一〇年には年間の敗血症患者は入院患者全体の3%、約十一万人だったが、一七年には5%の三十六万人に急増。入院千人当たりの死亡数も六・五人から八人に増加し、死者は二・三倍になったことが分かった。
 敗血症患者の死亡率は下がっていたが、高齢化が総数を押し上げた形。患者の年齢の中央値は七十六歳で、高齢者ではリスクが高いこともうかがえる結果となった。
 敗血症によって傷害を受ける臓器、組織は感染症の種類や感染した部位によって呼吸器以外にも多岐にわたる。
 新型コロナでは肺炎が高じて呼吸不全に陥るのが典型的だった。呼吸不全が重症化すると酸素が取り込めず、人工呼吸器や人工心肺装置ECMO(エクモ)での集中的な管理が必要となる。
 臓器障害には、血圧が下がる敗血症性ショック、急性腎障害や急性肝障害、敗血症性脳症、重い呼吸不全などのほか、全身の微小血管で血栓ができたり出血が起きたりする播種(はしゅ)性血管内凝固症候群(DIC)が含まれる。複数の障害が重なれば「多臓器不全」だ。
 一八年に日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本感染症学会の三学会が合同で結成した「日本敗血症連盟」は「敗血症では集中治療室での専門的治療が必要で、心筋梗塞や脳卒中のように治療は一刻を争うことを知ってほしい」と啓発の必要性を訴える。
 敗血症の増加は日本だけの問題ではない。世界では毎年推定で約三千万人が敗血症を発症し三人に一人が亡くなる。世界保健機関(WHO)は一七年、敗血症を「重大な健康課題」として認定し、多剤耐性菌対策やワクチン政策、高齢者や周産期医療、公衆衛生対策などの強化を促している。

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