「第九って人生そのもの」団員らに迫るドキュメンタリー映画 コロナで1年半の延期経て27日から下北沢で公開

2021年11月23日 18時55分

映画の一場面。市民合唱団の「歓喜の歌」の練習風景

◆東京の年の瀬に第九の彩りを

 年末の風物詩、ベートーベンの交響曲第9番「第九」公演に出演する市民を追ったドキュメンタリー映画「ルートヴィヒに恋して」が27日から、東京・下北沢で公開される。昨春公開予定だったが、新型コロナ感染拡大により直前で中止に。上映を求める声が相次ぎ、1年半たってようやく公開にこぎ着けた。感染状況は落ち着いているが、今年も地域主催の第九公演は中止が目立つ。製作会社の担当者は「映画が東京の街角に、年の瀬の彩りを与えられたら」と願う。
 「抱き合え、幾百万の人々よ!この口づけを全世界に」。風呂掃除をしながら「歓喜の歌」を口ずさむ中年女性、自宅の一室で難解なドイツ語の発音を繰り返す高齢男性―。映画に登場するのは、兵庫県姫路市と神戸市の合唱団に所属する小学生から100歳超の団員たち。カメラは公演に向けて練習や体力づくりをする姿を捉える。

監督を務めた金素栄さん(写真はいずれも映画製作工房シネマヤ提供)

◆プロでない市民が堂々と歌う姿に感動

 監督は2003年に来日した韓国出身のキムヨン監督(53)=神戸市。日本では第九公演が年末の恒例行事で、スーパーでも1年中、第九が流れていることにカルチャーショックを受けたという。プロではない市民が堂々と舞台で歌う姿に感動し、「なぜ普通の人が難曲に夢中になるのか知りたい」と、企画から約5年かけて製作した。
 両合唱団の団員約200人のうち約40人に話を聞いた。映画ではそれぞれが、第九にかける思いを語る。
 木材加工会社で働く男性は、人生の浮き沈みを表現するかのように手のひらを上げ下げしながら「第九って人生そのものやろ」と言う。がんで余命半年と宣告を受けた男性は「第九がないと生活の一部が欠ける」と力を込める。1995年の阪神淡路大震災で多くの死傷者と向き合った元看護師の女性は第九を鎮魂歌と捉え、「亡くなった人が聴きに来てくれていると思い、21年間歌い続けてきた」と語る。
 金さんは「ベートーベンは第九を、貴族より民衆に歌ってもらおうとしたとされる。日本ではまさに、第九が童謡のように生活に溶け込み、一人一人の人生が編み込まれている」と話す。

◆上映中止も、公開求める声相次ぐ

 映画は19年2月から、姫路市、神戸市のほか、名古屋市など7カ所で公開されたが、東京での公開を間近に控えた昨年4月上旬、新型コロナの感染拡大で一斉に上映中止となった。その後、「いつ東京で上映するのか」という問い合わせが相次いだという。
 金さんは「コロナ前の世界にはなかなか戻れないが、『すべての人々は兄弟』と歌詞にあるように、映画を通じて近くや遠くの人を思いやる心をもってもらい、元気づけられたら」と期待する。
 12月17日まで上映。火曜日は休み。製作・配給は映画製作工房「シネマヤ」(神戸市)。上映時間などに関する問い合わせは、上映館「下北沢トリウッド」=世田谷区代沢5―32―5、電03(3414)0433=へ。(太田理英子)

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