<新型コロナ>3回目ワクチン接種「8カ月空けて」の根拠は? 感染再拡大中の欧米と同じでいいの?

2021年11月24日 06時00分
 新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を巡る政府のあやふやな説明に、自治体が混乱している。政府は、2回目から「8カ月以上」空けての接種を原則とするが、科学的根拠は乏しい。例外として「6カ月以上」に前倒しすることも認めるが、その基準は決まっていない。政府が「8カ月以上」の参考にした欧米では感染が再拡大している。高齢者の免疫が下がる前に3回目接種が間に合うのか、不安が残る。(原田遼)

◆方針が二転三転「現場が混乱」

 「方針が二転三転し、現場は大変混乱している」。オンラインで開かれた21日の全国知事会。前知事会長の飯泉嘉門・徳島県知事は、3回目接種を巡る政府の対応を批判。知事会は基準の明確化を求める緊急提言をまとめた。
 混乱の始まりは15日の厚生労働省ワクチン分科会。「8カ月が標準。地域の感染状況などに応じて6カ月も可能」と、3回目接種を了承した。だが、後藤茂之厚労相は翌日、「(6カ月は)非常に特殊な場合で、相談してもらう。自由に前倒しを認めるものではない」と発言した。
 分科会で専門家は自治体の裁量を認めたが、厚労相の発言で狭められた格好だ。厚労省に相談する必要性は分科会で議論されていない。厚労省の飯村祥子専門官は「ごくごく細かいところ。諮問の対象ではない」と釈明する。

◆5カ月で予防効果半減という研究も

 なぜ、「8カ月」にすべきなのか。厚労省は「外国の例などを踏まえた」と説明した。米国、英国、ドイツ、フランス、カナダが2回目接種から8カ月後に、3回目接種を行っているとの資料を分科会で示した。
 一方で、3回目接種が必要な根拠として、分科会で示された海外研究では、ファイザー製ワクチンの2回目接種後、感染予防効果が半減するのは5カ月後だった。さらに、2回目から7カ月後、重症化・死亡への予防効果が約4割落ちるとの別の海外研究も紹介。いずれも「8カ月」を推奨する根拠に乏しい。
 現に、厚労省はファイザーの3回目接種での使用を、申請に基づき「2回目から6カ月経過した後に接種できる」として承認した。飯村専門官は「自治体の準備状況も含めた総合的判断」を8カ月の理由とするが、急ぎたい自治体もある。

◆高齢者施設での前倒し求めるが…厚労省は留保

 東京都世田谷区はクラスター発生リスクが高い高齢者施設での3回目接種の前倒しを検討する。後藤厚労相の発言に従って厚労省に相談したが、担当者は「今は判断できない」と回答。了承を得られなかったという。保坂展人区長は「最悪の想定をすべきなのに、対応が漫然としている」と憤る。
 欧州を中心に感染再拡大は深刻だ。オーストリアは22日からロックダウン(都市封鎖)を実施し、ドイツも検討に入った。保坂区長は「2カ月後の日本は今の欧州だ。感染が再拡大している国と同じことをしていては手遅れになりかねない」と強調する。
 横浜市も高齢者施設での前倒しを議論している。政府の基本的対処方針分科会の尾身茂会長は19日の会合後、「高齢者施設への接種を早めたらどうかという意見が複数あった」と明かした。だが、飯村専門官は「そうした意見は承知しているが、(8カ月以上が原則という)方針は変わらない」としている。

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