<論戦ファクトチェック>首相の「経済成長」本当? GDP13%増→基準変更伏せて発表

2020年3月9日 02時00分
 安倍晋三首相は六日の参院本会議で、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を注視し「十分な経済、財政政策を行っていく」と経済重視の姿勢をアピールした。首相は他の答弁や演説でも、成長戦略の成果を強調している。だが、本紙がファクトチェック(事実確認)したところ、経済政策を巡り説明不足や不正確な表現があった。
 「経済は七年間で13%成長し、来年度予算の税収は過去最高となった」。首相は施政方針演説で語った。
 この根拠について、内閣府の担当者は本紙に、政権復帰前後の二〇一二年十~十二月期の国内総生産(GDP)約四百九十三兆円と一九年七~九月期の同約五百五十九兆円を比べたと説明した。確かに伸びは約13%だが、首相は政府が一六年にGDPの計算方法を変えたことに触れていない。
 新旧両基準が公表されている一二~一五年度の名目GDPの成長率は、旧基準では5・5%なのに対し、新基準では7・6%に上昇する。各年度の成長率の平均値も新基準が上回る。安倍政権の経済政策に詳しい明石順平弁護士は「アベノミクス以降の成長率が不自然に上振れしている。計算方法を変更したから『七年間で13%成長』が達成できたと言える」と指摘する。
 新年度の税収を「過去最高」と明言したのも不正確だ。二〇年度予算案の税収六十三兆五千億円は、見通しにすぎない。一九年度は当初予算で税収六十二兆五千億円と見積もったが、企業業績の悪化などで二兆円超の下方修正となった。
 二〇年度の税収見込みは補正を含む一九年度予算より約三兆三千億円増えた。その約八割は、昨年十月に税率10%に上がった消費税が占める。景気回復による法人税収増などが大きく押し上げたわけではない。
 代表質問では、首相が質問の趣旨をすり替えて答弁した。立憲民主党の枝野幸男代表が、民主党政権時に回復傾向だった実質賃金が第二次安倍政権下で下落、低迷していると指摘し「いつまでにどうやって増加を実現するのか」と尋ねた。首相は直接答えず、当時は物価が下がっており、物価変動を反映する実質賃金が好調に見えたと主張した。
 元経済産業省官僚の古賀茂明氏は「『前政権は今よりひどかった』と自分を正当化し、政策の失敗を認めない姿勢は問題だ」と指摘している。 (大野暢子)

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