賃上げ税制、基本給重視に 金融所得課税は議論持ち越し 22年度改正大綱方針

2021年11月24日 20時58分
 自民党税制調査会の宮沢洋一会長が本紙などの取材に対し、現行の「賃上げ税制」について「企業が賃上げをしたいと思う税制にしなければいけない」と話し、12月上旬に取りまとめる2022年度税制改正大綱に改正案を盛り込む方針を示した。
 現在の賃上げ税制の仕組みは、大企業では新規採用者の給与総額を前年度より2%以上増やした場合、支払い分の15%を法人税額から控除できる。宮沢氏は「ボーナスを上げることで(賃上げ税制の)基準をクリアしてきた」と振り返り、「一回こっきりではなく、基本給などがしっかり上がっていくことで経済が回る」として、制度の対象を基本給を上げた企業とする方向で議論する考えだ。
 岸田文雄首相が一時意欲を示しながら先送りした金融所得課税の強化については「改正項目として議論する予定はない」と、来年度以降に持ち越すとした。

インタビューに答える自民党の宮沢洋一税調会長=東京・永田町の自民党本部で

 住宅ローン減税の控除率1%を縮小する意向も示した。住宅ローン減税は、ローン残高の1%の金額を所得税や住民税の税額から差し引ける制度で、現行の低金利下では支払う利息よりも控除額が大きくなる例がある。引き下げ幅は今後議論していくとした。

◆識者は税制での賃上げを疑問視

 賃上げ税制の拡充は、岸田政権が掲げる分配政策の柱の一つだ。政府・与党は2022年度税制改正で、継続的な賃金上昇につながるよう制度を変える考えだが、識者は税制で賃上げを図る限界を指摘する。
 賃上げ税制は第2次安倍政権の2013年に導入され8年が経過したが、日本の平均賃金は目立った上昇をしていない。法人税額から給与の支給総額の上昇分などの一部を差し引く仕組みのため、法人税を支払っていない赤字企業はそもそも税制優遇の対象から外れる。
 宮沢氏は「結果的には、『じゃあ賃上げをしよう』というより『ああ、これ使えるね』という税制だったのではないか」と、税制が継続的な賃上げにつながらず、効果が限定的だったことを認めた。

◆基本給を条件にすると、企業は慎重になる

 与党は基本給を上げた企業に税制優遇を絞ることを検討する。だが、野村総研の木内登英氏は「基本給を条件にすると、賃上げ効果はむしろ小さくなる可能性がある」と懸念する。基本給はボーナスよりも一度上げれば引き下げにくく、企業はより慎重になるためだ。「税優遇で賃上げを促すのは小手先の考えだ」と批判し、「うまくいかなかった政策をなぜ深掘りするのか」と疑問を呈した。
 東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹は「賃金が上がらないのは、企業の生産性が上がらないから。そこの改善策が十分でない中、税優遇を拡充しても賃上げにつながるかは疑問だ」と懐疑的だ。「そんな財源があるなら、労働者に直接給付していく制度を考えた方がよほど効果があるのではないか」と指摘した。(原田晋也)

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