<新型コロナ>国立感染研 現場は悲鳴 歴代政権下で人員・予算減

2020年3月7日 02時00分
 新型コロナウイルスの感染に関する検査や終息に向けた活動を行う国立感染症研究所(東京都)の人員や研究費の減少傾向が続いている。外部の有識者は十年前から今回のような感染症流行時に支障を来すとして増員、増額を要望していたが、歴代政権は聞く耳を持たなかった。研究者らは感染拡大への対応に追われ、専門家は「政府は対策を軽視していた」と批判する。 (川田篤志)
 「国民に不安を与えるから『新型コロナウイルスの対応が大変』と研究者たちは言わなかったが、人や予算があった方が良いのは明らかだ」
 感染研の複数の研究者と二月下旬に意見交換した全厚生労働組合の川名健書記長は現場の苦労をおもんぱかる。別の関係者も「もともと研究者が少ない中で現場は悲鳴を上げている」と打ち明ける。
 感染研は、国の感染症対策の中核を担う厚生労働省に置かれた研究機関。新型コロナウイルスの国内感染が確認されて以降、感染が疑われる人の検体採取や、北海道での濃厚接触者の把握を含む疫学調査など業務は多忙を極める。ウイルスの分離、培養に成功し、検査薬やワクチンの開発も支援して封じ込め策でも重要な役割を果たしている。
 安倍政権は観光を成長戦略の柱に位置付け訪日外国人の増加をアピールしてきた。旅行者が持ち込む感染症対策の重要性は増すはずだが、国家公務員の定員合理化の影響で感染研の新規採用を抑制。二〇一九年度の研究者数は三百七人で一〇年度より十八人減った。
 研究などで自由に使える「裁量的経費」は約二十億円で、国の財政健全化目標により毎年削減を要求されている。研究者個人が応募して獲得する国の「競争的研究資金」と合わせた研究費の総額は低迷が続く。
 大学教授らで構成される感染研の研究評価委員会は一〇年度の報告書で、感染研の役割を踏まえ「国家公務員削減計画の除外対象にすべきだ」と指摘した。一三年度には「予算上の問題で、感染症の集団発生時にタイムリーなアクションが取れなければ大問題となりうる」とし、一六年度にも「財政的・人的支援が伴わなければ全体が疲弊する」と警鐘を鳴らし続けた。
 一〇年から五年間委員を務めた地方衛生研究所全国協議会の小沢邦寿・元会長は「新型コロナのような緊急事態こそ、日ごろの基礎研究が大切になってくる」と強調。「グローバル化で感染症の流入は避けられず、予算や人員を充実させておくべきだった」と政府の対応を批判する。感染研の広報担当者は取材に「感染の封じ込めが先だが、今後、研究者や予算を増やす要求をしたい」と語った。

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