<曇りのち晴れ>青年は荒野をめざす

2021年11月25日 07時12分
 五木寛之の「青年は荒野をめざす」に先輩はあこがれた。物語と同じくナホトカ航路でロシアに渡り、欧州、中東、インドを自転車でまわる。1978年春から丸1年の貧乏旅行。学生時代の漫遊記を今年3月からSNSで書き続けていた。
 この連載を私が知ったとき先輩はもういなかった。仁賀奈雅行さん。先月、肺がんで亡くなった。享年65歳。本紙の記者、デスクとして誰からも頼りにされる存在だった。
 定年を迎えたときのあいさつを覚えている。「若手記者だった頃のように仕事がしたい」。特別嘱託になり原稿を書き続けた。それががんで治療に専念せざるを得なくなる。病床で綴ったのがこの漫遊記だった。
 連載の結びで告白している。「43年前、回れなかった各地を走りたい」。それを旅行記にし、新聞で連載できないか提案したかった。でも願いは「困難になりました」。
 最後の文章から半年後。奥さんによると「(亡くなる)前日はサッカー観戦を楽しみにしていました」。高校時代はサッカー一筋だった。青年からさらに少年に若返り、旅立ったのだろう。(稲熊均、62歳)
 ◇
厚い曇り空でも雲の向こうには必ず青空がある−
そんな思いを胸に、記者が暮らしの出来事を綴(つづ)ります。

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