<お父さんへ 父と娘の14000通>(最終回)親というより先輩

2021年11月25日 07時13分
 この十月で、私と父の毎日のメール交換は二十一年を迎えた。こんなに長く続いた理由の一つに、関係性の変化もあるかも、と思っている。
 十八歳で家を出るまで、ガサツで突拍子もないことをする私は、父からお小言を言われる存在だった。
 就職してからは、親であると同時に、社会人の先輩という感覚も生まれた。
 振り返ると私は、異動のたびに不安や不満を打ち明けてきた。現役時代は三年ごとに転勤を繰り返してきた父は、そのたびに「長い人生のひとこま」「台風が過ぎれば青空」などと心の持ちようを説いてくれた。今いる場所が一番居心地がいいと感じるのは、充実した仕事ができた証拠だ、とも。父が今で言うパワハラにあっていたこともメールで初めて知った。
 他にも、住宅ローンの返済方法、老後資金のため方など、叱(しか)り叱られる関係だった頃とは話題が変わってきた。
 今は老化の先輩。最近の私は、よく物をつかみ損ねて落とす。脳か神経の病気で握力が低下しているのではと悩んだが、父は「年を取ると注意力が散漫になります。年相応の現象」と一刀両断。「そのうち腕が上がらず茶わんを転がす」と予言まで。父自身も、この数日前の夕食時にビールが入ったコップを盛大にひっくり返したそうだ。私が直面する岐路や老化現象を、父は三十年早く経験している。親の背中を追うって、こういうことなのかなと思う、五十路(いそじ)の冬。 (宮崎美紀子)
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 父、80歳、兵庫県在住。娘、52歳、神奈川県在住。ひょんなことから、二十一年間毎日、七千通以上のメールを送り続けた父と娘のコミュニケーション術。

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