<社説>石油備蓄放出 暮らし支援を最優先で

2021年11月25日 07時39分
 岸田文雄首相が石油の国家備蓄を放出すると表明した。原油価格の高騰を抑えることが目的だ。ただ効果を疑問視する声も出ており、生活支援につながるかを見極めながら対策を進めるべきだ。
 日本は米国や中国、インドなど石油の大消費国と協調して放出を進める。国家備蓄=写真は鹿児島県内の備蓄基地=は百四十五日分(九月末時点)程度で、目標量の九十日分を超えている。
 政府は余っている部分から放出する方針で米中なども順次放出する。ただ放出分をすべて合計しても各国消費量のほんの一部にすぎず、原油市場で持続的な価格下落が起きるかどうか不透明だ。
 協調放出の背景には、ガソリン価格上昇で国民の不満が強まっている米国の事情がある。日本の決定は米国の要請に即応した形だ。ただ国内物価より米国への配慮を優先させ、効果が不透明な決定をしたのなら看過できない。
 日本の国家備蓄は一九七三年の石油ショックを機に始まった。七五年に制定された石油備蓄法によると放出は災害や紛争による需給逼迫(ひっぱく)に限られる。岸田首相には、価格抑制のための放出が法に抵触しないのか、今回の決定理由と共に詳しい説明を求めたい。
 さらに早く放出するのなら流通施設に蓄えている民間備蓄を使った方が効果的だったはずだ。国家備蓄を選んだ理由も聞きたい。
 今後、原油価格は石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどでつくるOPECプラスの次回会合(十二月二日)の結果が大きく影響する。脱炭素化の流れの中、将来的な原油の値崩れを不安視する産油国は増産に消極的だ。
 だが産油国の大幅増産がなければ協調放出の効果が水泡に帰す可能性もある。日本は米中などと足並みをそろえ産油国に改めて強く増産を促すべきだ。
 国内では電気やガソリンなど生活関連の物価が軒並み上がり、生活を直撃している。円安の加速で物価高がより広範囲に広がる恐れもある。政府には、備蓄放出など石油価格の安定策があくまで物価抑制による暮らしの支援を目的とすべきだと念押ししておきたい。

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