<新型コロナ>中韓からの入国規制 首相表明 ビザも停止 指定場所で2週間待機へ

2020年3月6日 02時00分
 安倍晋三首相は五日、新型コロナウイルス感染症対策本部会合で、感染のさらなる拡大を阻止するため、中国、韓国からの入国者に指定場所で二週間待機し、国内の公共交通機関を使わないことを要請すると表明した。両国から帰国する日本人も含まれる。中国人、韓国人に発行済みの査証(ビザ)は無効とし、韓国、香港、マカオはビザの免除措置を停止する。水際対策の抜本的な強化で、中韓からの新たな入国を当面規制する。 (後藤孝好)
 首相は会合で「一部地域の入国拒否を講じても中国や韓国全土から人の流入は続いている」と指摘。その上で「感染拡大を防止し、国民の不安感を解消するためには、両国からの入国者に対する検疫を強化し、国内において公共交通機関を使用しないことを要請する」と述べた。
 入国者の抑制と検疫強化のため、中韓からの旅客機が到着する空港を成田空港と関西国際空港に限定し、船舶は旅客運送を停止するよう要請。実質的に両国の観光客に来日の自粛を求めた。入国規制の強化策は九日から適用し、当面は三月末まで実施する方針だ。
 昨年の中国人の入国者数は約七百万人。韓国人は約五百万人。国・地域別で一、二位。経済活動や観光への打撃は不可避だが、国内のさらなる感染拡大防止を優先した。
 感染拡大が著しい韓国の一部地域に関しては滞在歴のある外国人の入国を拒否しているが、七日から対象地域を拡大する。イランの一部地域も追加指定する。
 品薄状態が続くマスクについては、国民生活安定緊急措置法を適用してインターネットなどでの転売行為を禁止した。法律に基づく転売禁止の指定は初めて。違反には罰則も科される。
 国がマスクを購入して必要な施設に優先的に配布することも決定。再利用可能な布製マスク二千万枚を購入し、介護施設や障害者施設、保育所などに行き渡るよう自治体を通じて配る。調達が困難になっている医療用マスクについても、輸入などで千五百万枚を確保して医療機関に供給する。
 政府は国家安全保障会議(NSC)の緊急事態大臣会合も開催した上で入国規制措置などを決定。外務省は、韓国の感染症危険情報を更新し、大邱(テグ)市など既にレベル3の渡航中止勧告とした地域を除く全土を、不要不急の渡航自粛を求めるレベル2に引き上げた。

◆「何も聞いていない」「国内対策を」

 中国、韓国からの入国を規制する突然の政府方針には、専門家から疑問の声が上がっている。
 「何も聞いていなかった。今はそうしたことをする段階なのだろうか」
 政府対策本部の専門家会議メンバーの押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は、困惑した様子で受け止める。「危険な地域から人を受け入れないことは感染症対策としてはあり得る。ただ、危険な地域は東南アジアや米国などにも広がっており、全部やらなければならなくなる」と指摘する。
 専門家会議は、国内で局地的に発生している小規模な患者集団(クラスター)を生み出さない取り組みを重視しており、押谷氏は「まずは国内の対策に力を入れるべきではないか」と疑問視した。
 国立病院機構三重病院の谷口清州(きよす)臨床研究部長は「事実上、入国制限に近い対策だが、既に国内に感染が広まっていると考えているなら意義は薄れてしまう」と受け止めた。
 その上で「全体の戦略として、国内の感染をいっぺんに終息させられる段階だと考えているならば、入国させないことに意味がある。ただ、その場合は国内でも広範な外出自粛など、より強力な対策が必要かもしれない」と指摘した。 (井上靖史)

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