立憲民主党、自公批判票の2割弱しか取り込めず 衆院選の投票行動分析 早大・日野愛郎教授が分析

2021年11月26日 06時00分
 先の衆院選の際に早稲田大政治経済学術院の日野愛郎あいろう教授(投票行動)が行った意識調査で、自民、公明両党の連立政権を評価しない有権者のうち、比例代表の投票先を立憲民主党と回答した割合は2割未満にとどまり、野党第1党が政権批判層を取り込めていなかった実態が明らかになった。党の再生策を競う立民代表選に関し、日野氏は「党内に多様な人材がおり、若者らの民意を反映した政策を掲げる『将来の与党』と思われる存在になるべきだ」と訴えている。(大野暢子)
 調査は衆院選投開票前日の10月30日、インターネット上で4844人を対象に実施。安倍・菅政権を「よくやってきた」と評価した人は回答者の20.7%で、「まあよくやってきた」は37.1%。評価しない回答の「あまりよくやってこなかった」は17.0%、「よくやってこなかった」は25.0%だった。
 「あまりよくやってこなかった」と「よくやってこなかった」とした人のうち、投票先を立民と答えたのは17.4%で、政権批判層の受け皿になりきれなかった。批判票の行き先は日本維新の会11.2%、自民7.4%、共産党6.3%、国民民主党4.9%、れいわ新選組4.6%と分散していた。「未定」は22.4%に上り、「棄権」も8.2%だった。
 立民は森友・加計学園問題での政権のずさんな公文書管理などを批判し、政府の新型コロナウイルス対策を厳しく追及していたが、日野氏は「立民は強力な批判票を他の野党と分け合う構図になった」と指摘。「穏健な批判票は維新に流れる結果となり、自民は政権を評価した人を手堅く取った」と分析した。

◆「自民や維新が違いを目立たせないようにした」

 また、公約から各党の政治的な立ち位置を座標軸で分類したところ、与野党が「リベラルかつ社会保障を重視」する領域周辺に集中していた。日野氏は「自民や維新が立民などとの違いを目立たせないようにした。さらに、多くの野党が狭い支持層で票を奪い合うことになった」としている。
 立民が選挙戦でアピールした選択的夫婦別姓制度や同性婚を可能とする法制度の実現などは、中高年と比べて若年層の注目度が高かったと判明したが、実際の投票行動には結びついていなかった。日野氏は「こうした争点を重視する若者が必ずしも投票に向かっていないため、若年層のための公約の策定と、それを伝える力を持つ候補者の開拓が鍵だ」と話した。

◆立民代表選「年金制度改革のような看板政策を」 日野教授

 30日に選出される立憲民主党の新代表には、衆院選の敗因分析を踏まえ、来夏の参院選に向けた党の立て直し策が求められる。日野教授に、党が目指すべき方向性などを聞いた。
 ―立民は何に力を入れるべきか。
 「自民党に似た政策を打ち出しても意味がない。旧民主党にとっての年金制度改革のように、与党と議論しても主導権を握り続けられる看板政策を掲げ、有権者に浸透させるべきだ」

日野教授

 ―今回の衆院選公約では不十分だったのか。
 「経済対策や新型コロナウイルス対策で、他の野党との違いが分かりにくかった。さらに自民や公明党、日本維新の会が、野党支持層にも響くように公約の表現を工夫したことで、立民が埋没した。ただ、選択的夫婦別姓の導入などは自民と明確に異なる独自の政策と言えた」
 ―他の野党との連携のあり方は。
 「衆院選での共闘は誤りではなく、道半ばに終わったという印象だ。立民や共産党など野党4党が安全保障関連法廃止を訴える『市民連合』と結んだ共通政策には、国民民主党が参加しないなど、有権者には一枚岩に見えにくかった」
 ―立民の新代表に求められる役割は。
 「立民は昨年9月、国民民主や無所属の議員らと合流して政権交代に近づいたと言われたが、枝野幸男氏をトップとする党のイメージはあまり変わらなかった。女性・若手など人材の豊かさを印象付け、いずれは国民民主や維新の一部と連携を探るような努力も欠かせない」
 ―投票率の低さが野党に不利という見方もある。
 「安倍・菅政権に批判的な人の一定数が投票に行っていない事実は重い。野党が1つのチームとして協力し、与党に取って代われるというメッセージが必要だ。現閣僚に対する『影の内閣』をつくるなど、有権者への見せ方も大事だ」

ひの・あいろう 1974年生まれ。英エセックス大大学院博士課程修了(政治学博士)。国政選の投票行動分析や、新聞、テレビ、インターネット上の世論分析を専門とする。2014年から現職。

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