<寄席演芸の人びと 渡辺寧久>末広亭を守り続けて 新宿末広亭席亭・真山由光さん 

2021年11月26日 07時35分

新宿末広亭・真山由光席亭

 今年の元日。ひっきりなしに客が足を運ぶはずの正月初席の風景に、頭を抱えた。
 「さあ、始まるぞ、と木戸を開けたら、お客さまはパラパラパラ、十人かそこらでした。ショッキングでしたね。例年百人二百人は並んでいるんですが」
 コロナ禍で最も衝撃的だった風景をそう振り返るのは、東京・新宿末広亭の真山由光(よしみつ)席亭(71)だ。二〇一一年十一月に四代目席亭に就任し丸十年。寄席経営のかじ取りをしてきたが、「コロナ禍のきつさは桁違い」と痛感。客は入らず、売り上げは減り、蓄えが目減りしていく不安を嫌というほど味わった。
 今年五月〜六月、落語協会(柳亭市馬会長)、落語芸術協会(春風亭昇太会長)主導のもと、“寄席支援クラウドファンディング”が実施された。その寄付金目録贈呈式で真山席亭は「これですべてが解決できるわけではないが、粘れるだけ粘る」と力強く発信した。

クラウドファンディングで集まった寄付金目録贈呈式での(左から)柳亭市馬、春風亭昇太、真山席亭=東京・新宿末広亭で

 「その思いは今も変わりません。(寄付は)助かりました。延命できました。でも万能薬ではない。来年の春ぐらいまでは持ちこたえられますが、その先は分かりません」と冷静に見通す。ただ、希望も感じている。「最近も、(柳家)喬太郎(きょうたろう)や(神田)伯山(はくざん)の芝居(興行)は、びっくりするくらい入りました。人気の芸人が出ると、若いお客さんが来てくれる」。うれしい兆しだ。
 ご意見番として演芸界に目配りを利かせた初代席亭・北村銀太郎の孫として「席亭が持つ空気を見ながら育った」。古今亭志ん生に間に合ってる(=生で聞いている)ことも宝物だ。
 寄席への愛着は人一倍強く、「私が(寄席を)やめたら、芸人を裏切ることになる」と言い聞かせ、昔の寄席小屋の風情を残す末広亭を守り続ける。
 「元々楽屋にはあまり行かなかったのですが、最近はなるべく顔を出して、芸人と雑談したり談笑したりしています。俺も頑張るからみんなも頑張ろうと。まずは来年正月、いくらか客足が戻ってくれれば、ちょっとはいけるかと思います」 (演芸評論家)

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