言葉で表現できない気持ちを絵に「生きる喜び伝えたい」 統合失調症の田辺さん、成田空港で作品展

2021年11月26日 12時00分
 人間関係に悩み、心に深い傷を負った青年が、現代アートの画家として羽ばたこうと、心象風景を中心テーマに、創作活動に打ち込んでいる。「つらい体験の一方で、すてきな出来事もあった。生きる喜びを多くの人に伝えたい」と、国内外の旅人が行き交う千葉県の成田空港で作品展を開いている。 (堀場達)

心象風景を描いた作品を中心に創作を続ける田辺大さんと支援者の坪井純子さん(右)=千葉県の成田空港で

 同空港第1ターミナル中央ビル5階のNAAアートギャラリーで作品展「心の扉」を開いているのは、栃木県佐野市の田辺だいさん(32)。小中高でいじめを受け、高校2年の時、学校に通えなくなった。通信制高校で単位を取得後、東京都内の大学の芸術学部に進んだが、統合失調症と診断され、現在も闘病を続けている。
 「絵を描くのはむしろ嫌いでした。ほめられたことがなかったから」。周囲ともうまく打ち解けられず、「ぼくは何も評価されない…」と落ち込んでいた田辺さん。「言葉で表現できない自分の気持ち。そうだ、絵にしちまえばいいんだよ」。当初は嫌だった絵が支えとなった。
 大学卒業後に始めたアルバイトでもつらい思いをし、7年前、佐野市に帰郷。精神障害者らの就労支援施設に通ううち、3年前に宇都宮市で画廊を営む坪井純子さん(61)に出会った。坪井さんの娘は、学生時代に不登校となり、現在は画家として活動。坪井さんの娘の作品展を見た田辺さんが頼み込んだ。「ぼくも作品を世の中に発表したい」
 今回、坪井さんが会場の運営業者との間に入って交渉するなどして作品展の開催が実現した。出品した13点の絵は、田辺さんが自身の体験を基に、揺さぶられた感情を、脳内の神経細胞の動きに託して表現した作品が多い。作品はカラフルなものが大半で、明るい雰囲気を醸し出す。
 カラフルな作品の中で、目を引くのが「バイトの傷」と題された絵。色は白と黒のみ。「殴られ、自分に非はないのに、存在を否定されたかのように、どん底の気分になった」。「我慢」という作品は、大学時代のモデルデッサンが題材。寒さに耐える裸の男性モデルを学生たちの熱気が取り囲む様子を表現した。
 坪井さんは「障害者ら社会的に弱い立場の人の創作活動を後押ししようと考えていたのですが、それ以上に田辺さんの作風にひかれた」と打ち明ける。「心の動きをシンプルに、しかしダイナミックに描いている」
 「いやなことばかりでなく、達成感や恋愛など楽しい感情についても描いた。生きていることは幸せ、と気付いてもらえれば」と田辺さんは話す。
 作品展は12月7日まで。午前6時~午後10時(最終日は午後3時まで)。入場無料。

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