EU内で「国境の壁」建設の議論が再燃 中東からの難民・移民流入を警戒

2021年11月26日 19時38分
 【パリ=谷悠己】欧州連合(EU)内で「国境の壁」の建設を巡る議論が再燃している。中東からベラルーシ経由でEUを目指す難民・移民らが国境付近に集結したポーランドなどが、建設費用の一部を負担するようEUに求めているためだ。EUは「人権尊重」を掲げる一方、難民・移民の大量流入を防ぎたいとの本音も抱え、対応に苦慮している。

18日、ベラルーシとの国境に配置されたポーランドの治安部隊=ゲッティ・共同

◆「資金を分け合うのは当然」とポーランド首相

 「われわれはEUと北大西洋条約機構(NATO)の東端を守っている。資金を分け合うのは当然だ」
 ポーランドのモラウィエツキ首相は25日付フランス紙フィガロのインタビューでこう語った。
 ポーランド政府は有刺鉄線を突破しようとする難民や移民の流入を防ぐため、ベラルーシとの国境に全長180キロの壁を来月着工する。モラウィエツキ氏は、3億5300万ユーロ(約455億円)に上る総工費の半分をEUが負担すべきだと主張している。
 EU内で壁建設の費用負担が問題となったのは初めてではない。
 2015年の欧州難民危機で域内に130万人が流入したことを受け、ハンガリーが域外国セルビアなどとの国境に壁を建設。費用負担を求められたEUは人権擁護を理由に拒否した。

◆リトアニア、ギリシャ……増える賛成派

 当時はハンガリーを支持する声は少なかったが、今年に入り、ポーランドより前にベラルーシ経由の難民流入に直面したリトアニアや、アフガニスタン危機による難民の増加を懸念したギリシャが相次いで壁の建設を決断。先月には、この4カ国に加え、オーストリア、ブルガリア、キプロス、デンマーク、エストニア、ラトビア、チェコ、スロバキアが連名で費用負担を求める書簡を欧州委員会に送るなど、賛成派の国が増えている。
 EU内では、ミシェル大統領が費用負担に前向きな姿勢を示す一方、フォンデアライエン欧州委員長は「壁には費用を出さない」と明言している。だが、欧州委は壁以外の国境警備設備に対しては今後7年で64億ユーロ(約8300億円)を投資予定。ある外交官はフィガロ紙に「欧州委は言葉遊びをしているだけだ」と語り、矛盾する対応を皮肉った。

◆ベラルーシに足止めの中東難民 「帰国費用はEUが支払え」

 中東からベラルーシに入り、ポーランドとの国境付近に滞留していた難民・移民ら約600人が25日、イラクの旅客機2機でベラルーシの首都ミンスクをたち、26日までにイラク北部に到着した。

25日、ミンスクの空港で帰国のためのイラク航空機を待つ難民ら=タス・共同

 ロシアメディアによると、搭乗したのは、いずれもポーランド国境で欧州への入域を試みていた難民ら。自ら帰国の意思を固めたという。イラクは18日以降、自国の難民らを帰還させる特別機を運航させており、ベラルーシを離れた難民らは1000人を超えた。
 ベラルーシ当局は「ポーランドが受け入れなかった難民に対し、われわれは食糧や医療援助を与えた」と主張。国営通信によると、ルカシェンコ大統領は25日、難民らが帰国するためにかかった費用について「欧州連合(EU)が拠出するべきだ」と持論を展開した。(モスクワ・小柳悠志)

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