「16カ月予算」膨らむ歳出 大学ファンド、国土強靱化…緊急性乏しい事業にも 21年度補正予算案

2021年11月27日 06時00分
 政府が閣議決定した2021年度補正予算案は、補正としての歳出額が過去最大となった。「切れ目なく経済対策を実行する」ことを理由に、岸田政権も初の補正予算案を安倍、菅など歴代政権と同様、翌年度の当初予算案と一体で編成。だが一体編成は、予算規模が膨らみやすいと指摘されてきた。大きく上積みされた今回の補正も、緊急性が乏しい事業が目につく。(森本智之)

◆編成時間短く、チェック緩みがち

 一体編成は例年、当年度の補正分と翌年度当初分を併せた「15カ月予算」と呼ばれる形で編成され、2つの予算が年明けの通常国会で成立することが多い。
 ただ今回は、新型コロナ対策で営業時間の短縮要請に応じた飲食店に支払う協力金の原資が枯渇しかけるなどし、例年より1カ月以上早い21年内に補正予算を成立させる必要に迫られた。このため政府は例年より1カ月長い「16カ月予算」と称して編成した。
 財政法上、補正予算は当初予算の編成後、臨時に必要性が生じた「緊要な経費」に限られる。だが実際は「緊要」とは言いがたい事業が入り込むことが多い。補正は、当初に比べ編成にかけられる時間が短く、各省庁内や財務省のチェックは緩くなりがちだ。このため、当初で入れられなかった事業を補正に盛り込むことが常態化。政府関係者は「政治家主導の案件も多くなる」と指摘し、これらが「補正予算の規模が大きくなる理由」と漏らす。

◆投資に失敗すれば国民負担も

 今回の補正でも、岸田文雄首相が成長戦略の目玉として掲げる「大学ファンド」について「なぜ急いで予算化するのか」といった疑問の声が、政府内でも相次いで出ている。
 大学ファンドは国が出資し金融市場に投資して利益を大学に配分する事業。投資が失敗し損失が出れば、国民負担が生じかねない。リスクが高い事業なのに、自民党の甘利明前幹事長の後押しで20年度の補正で初めて予算化された。
 ファンドの運用は来年3月までに始まるが、どのように各大学に利益を配分するかなどの制度はまだ検討段階。それなのに今回の補正で6111億円が積み増された。22年度の当初予算案では財政投融資からも資金が加わる見込みだ。
 実績がない事業への異例の対応について、政府内からも「本当に経済成長に資するのか。総裁選でいち早く岸田氏の支持を表明した甘利氏への配慮だ」との声が上がった。

◆「政治案件」、「当初予算で対応すべきもの」まで

 他にも「政治案件」として補正予算案に計上された事業がある。「デジタル田園都市構想」の1つに据えられたマイナンバーカード取得者への最大2万円分のポイント付与は公明党の衆院選公約だ。経済官庁のある幹部は「単なる給付金では『バラマキだ』と批判されかねないが、マイナンバーカードと絡めれば、デジタル政策として大義名分が立つと判断したようだ」と解説した。
 緊急性が乏しい国土強靱化きょうじんか関連の公共事業関係費は菅政権の補正予算でも計上され、予算膨張の要因になった。財政の専門家は例年、「必要だとしても当初予算で対応すべきものだ」と指摘してきたが、岸田政権でも踏襲された。

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