鳥居が見ていた国際交流 『明治神宮 内と外から見た百年』 明治神宮国際神道文化研究所主任研究員・今泉宜子(よしこ)さん(51)

2021年11月28日 07時00分
 昨年十一月一日、創建満百年を迎えた明治神宮。人工の鎮守の森「内苑」と、スポーツ・文化施設を含む「外苑」が一体となって構成された神宮は、建築・造園・都市計画など当時の西洋の技術、思想を生かして造営され、「西洋と日本の架け橋的な存在」と言う。
 例年、一千万人の参拝客を迎え、コロナ禍の前は過半数が外国からの訪問者と国際色も豊か。創建以来、神宮の鳥居をくぐった幾多の外国人らを追い掛けることで「日本と世界が織りなした交流の歴史」を浮き彫りにできるのではないか。こうした問題意識から、神宮の「社務日誌」などの資料を頼りに、「内」と「外」の両面からアプローチを試みたのが本書。米映画『グランド・ホテル』さながら、さまざまな人物が「一つの舞台」に集い、それぞれのドラマが繰り広げられる。
 空の英雄、米国のリンドバーグ、インド独立運動の志士、チャンドラ・ボースら各時代の象徴的人物が次々に登場。戦災で焼失した社殿の再建に、海外の日系移民らの浄財が寄与したことにも「きちんと伝えるべき事実」として綿密な調査で光を当てた。戦後、歯切れよいべらんめえ調の司会で一世を風靡(ふうび)したロイ・ジェームスの意外な出自、「表敬」という言葉は一九六一年、アルゼンチン大統領の参拝の際に明治神宮儀式課が発案した造語といった興味深い話が随所に盛り込まれ、接収した外苑に連合国軍総司令部(GHQ)が建てた「自由の女神」像など、数々の資料写真が各時代の息吹を生き生きと伝える。
 東京大で比較日本文化論を専攻。卒業後、出版社で編集者を務めたが、鎮守の森を守るボランティア活動を通して神社への思いを強め、国学院大で学び神職の資格を取得。二〇〇〇年から明治神宮で研究者としての道を歩み始めた。渋沢栄一をはじめとする神宮の造営者たちの洋行体験を追跡した著作を出すなど「研究・執筆活動で繰り返してきたことは、内と外から明治神宮、明治日本を見つめ直す作業でした」と明かす。
 明治神宮には、海外の大学や留学生らから日本の文化や伝統を学ぶ研修を受けたいとの要望が寄せられ、語学の堪能な神職や職員らが対応しているという。「日本の開かれた窓という期待があればこそ。百年かけて築いてきた交流の歴史の重みをかみしめ、いつまでも開かれた窓であり続けるように努力したいと思います」。平凡社新書・一〇三四円。 (安田信博)

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