<社説>高齢運転の事故 免許返納できる社会に

2021年11月27日 08時17分
 高齢ドライバーによる悲惨な交通事故が後を絶たない。大阪で十七日、八十九歳の男が運転する車がスーパーの店先で暴走し、三人を死傷させた。男はアクセルとブレーキを踏み間違えたとみられており、事故前には免許返納を逡巡(しゅんじゅん)していたという。
 免許保有者十万人あたりの死亡事故発生件数をドライバーの年齢層別に比較すると、七十五歳以上は未満の倍以上の多さという。高齢になるほど、ペダルの踏み間違いやハンドル操作ミスが事故原因として増す傾向がある。  
 国は一九九八年、運転免許証の返納制度を始めた。返納者は当初、年三千人足らずだったが、右肩上がりに増え、母子二人が犠牲になった池袋暴走事故が起きた二〇一九年に六十万人台へ急増した。とはいえ、七十五歳以上の免許保有者は二〇年末時点で五百九十万人に上り、団塊の世代がこの数年で一気に仲間入りする。
 高齢になるにつれ、認知や判断能力が衰えることは避けられない。最新技術や施策でいかに補えるかが社会には問われよう。
 来春から、自動ブレーキなどを備えた安全運転サポート車(サポカー)の運転に限定した免許が創設される。人工知能(AI)を用いて歩行者や障害物を察知し、危険時にブレーキをかけたり、急加速を抑えたりする機能は、国内で販売されている大半の新車に搭載されている。国は昨年から最高で十万円の補助金を出しているが、二二年以降も継続を望みたい。
 七十五歳以上の免許更新者は現在、認知機能検査を義務づけられているが、来春から、速度超過などの違反歴がある人には教習所などでの実車試験も課される。免許を維持するハードルは相当上がり、返納者の急増も予想される。
 車がないと生活自体が成り立たないという地方や個人事情もあるだろう。頼みの綱のバスは「数時間に一本」といった公共交通の利便性が悪い地域も少なくない。車を手放すことで外出の機会が減れば、生活スタイルの変化や健康、生きがいにも影響しかねない。
 全国の自治体で、自動運転によるバスや車の実証実験、タクシーやバス乗車券への試験的な補助など多様な取り組みが進んでいる。行政は高齢者が免許を返納できる環境の整備にいっそう注力すべきだ。高齢者の安全な移動を多角的に支える社会でありたい。

関連キーワード


おすすめ情報