深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」 その泳ぎ 堪能あれ 12月2日〜1月31日・上野の森美術館

2021年11月27日 09時03分

新作インスタレーション《僕の金魚園》の中で【提供:神戸新聞社】

 金魚をテーマにした創作活動で知られる現代美術家・深堀隆介(1973年〜)。東京の美術館では初めてとなる本格的な個展、深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」(東京新聞など主催)が、12月2日から上野の森美術館で開催される。
 深堀が編み出した創作技法は独特だ。器の中に透明樹脂を流し込み、表面にアクリル絵の具で少しずつ部分的に金魚を描き、さらに樹脂を重ねる。その作業を繰り返し、樹脂が何層にも重なり合うことで、完成品を上から見ると、立体感のある金魚が浮かび上がる。その、まるで生きているかのようなリアリティーは、まさに超絶技巧と言うほかない。
 本展では、初期から最新の作品まで約300点によって、画業の全貌に迫る。絵画と立体作品のあわいに泳ぐ「深堀金魚」の美しさを、ぜひ会場で堪能していただきたい。

◆秋

《秋敷》2020年

 春夏秋冬における、金魚の美しさを描いたシリーズの「秋」編。金魚のみならず、桶(おけ)に落ちる紅葉まで本物のように描く、技巧の粋が垣間見える。日本的な美意識を反映した深堀の作品は現在、海外からも高い評価を集めている。

◆酒枡

《金魚酒 命名 美津島》2010年

 酒枡(さかます)の中に金魚を描いた、深堀の代表的な作品シリーズ。枡に描くことで、金魚が最も美しく見える上からの角度に鑑賞者の視線を固定する。このシリーズのみ、描かれる金魚は実在の品種ではなく、架空の新しい金魚を作出しているという。

◆引き出し

《方舟》2009年

 深堀は、机の引き出し、裏返した傘、食べ終えた菓子の容器など、通常液体を入れないものも作品に使用する。それらはいずれも日常的な存在ながら、そこに金魚が描かれることで、非日常的な感興が生まれている。

◆等身大

《大蘇我》2010年

 平面作品を制作する際、深堀は自らの等身とほぼ同じサイズにまで金魚を拡大する。その創作はまるで、「鏡の前の自分と対峙(たいじ)するような感覚」であると言う。重ね塗りによって表現される色の微妙なニュアンスが、それぞれの金魚の個性となる。

◇9〜11月に開催された神戸会場の風景

大型作品《方舟2》に見入る来場者

半紙、Tシャツなどに描かれた初期の作品群=いずれも【提供:神戸新聞社】

◇深堀隆介からのメッセージ 人間は地球に生きている金魚

 展覧会名にある「地球鉢」とは、私が考えた造語です。この言葉を作ったきっかけは、「人間は地球に生きている金魚なんだ」と気づいたことでした。それに気づかせてくれたのは、くしくも新型コロナウイルスの出現でした。あっという間に世界中に蔓延(まんえん)し、人類が初めて経験したこの受難は、水が汚れた金魚鉢に生きる金魚と同じ状況なのです。
 金魚飼育で絶対に必要なのは「水換え」です。水換えを怠れば金魚鉢の水は汚れ、やがて病原菌が発生し金魚は全滅します。今、地球で起こっている事は、この汚れた金魚鉢に近づいているように思えてなりません。金魚は水を汚すが、人間は水も空気も汚します。地球の水換え空気換えはできません。新型コロナの出現は「地球が汚れているよ」という地球からのメッセージではないでしょうか。
 私が20年前、作家をやめようとした時、部屋で見た1匹の金魚に救われ、金魚を描き始めました。それは、その金魚がまるで自分のように見えたからでした。そうして歩み続けて今、ようやく何のために金魚を描いてきたのか分かりかけてきたように思います。
<深堀隆介> 1973年愛知県生まれ。2000年、制作に行き詰まり作家をやめようとした時、部屋の1匹の金魚を見て開眼し、金魚の作品を作り始める(金魚救い)。02年、透明樹脂に直接絵を描く新しい絵画技法(2.5D Painting)を考案し発表する。09年ごろから、日本国内だけでなく、ニューヨーク、ロンドン、香港など海外でも展覧会を開催する。また、ライブペインティングやワークショップなど金魚を通して幅広い表現方法に取り組んでいる。現在、横浜美術大学客員教授・弥富市広報大使。

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