暴言・わいせつ電話1000件以上「カスハラから従業員守って」 コールセンター女性の訴えは認められるか

2021年11月28日 06時00分
 NHKの視聴者からの意見などに対応するコールセンターで勤務していた女性が、相次ぐセクハラ電話で精神的苦痛を受けたとして、センターを運営する一般財団法人NHKサービスセンター(東京都世田谷区)に110万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が30日、横浜地裁川崎支部で言い渡される。カスタマー(客)からのハラスメント(嫌がらせ)を巡り事業者側の安全配慮義務が問われる中、どのような司法判断が示されるかが注目される。

「辞めざるを得なかった人のためにも被告の責任をはっきりさせたい」と訴える元コミュニケーターの女性

 訴状などによると、原告の女性(61)=東京都町田市=は、同センターの川崎市内の営業所でコミュニケーターとして2002~19年まで勤務。センターには視聴者から問い合わせと称して「てめえこのやろう」「おねえさん今日は下着何色?」などの暴言やわいせつ電話があり、19年時点で年間1000件以上あった。
 こうした電話を受けた場合、コミュニケーターは、上司の対応責任者に転送できたが、責任者の判断が決まるまでは応対せざるをえず、カスハラ対策が十分ではなく精神的苦痛を受けたと主張している。

◆女性「人権無視して会社の利益守らなければいけないのか」

 女性は取材に「ハァハァ」と荒い息づかいで名前を呼んできたり、妄想の性行為を一方的に伝えたりする電話が繰り返されたと明かし、「精神疾患にかかったり異議を唱えると辞めさせられてしまう従業員がたくさんいた。人権を無視してまで会社の利益を守らなければいけないのか」と訴えた。
 訴訟で女性は迷惑電話対策として、センター側に相手方への法的措置を取るよう主張した。女性の代理人弁護士によると、訴訟の証人尋問で、当時のセンター視聴者対応専任部長は法的措置を検討したことがあるとした一方で、「NHKが最終的に判断するという形になる」と述べたという。NHKは取材に「NHKサービスセンターで対応する」と答え、センターは「判決前で会社としてコメントすることはない」とした。
 悪質クレームやカスハラの問題に詳しい関西大学の池内裕美教授(社会心理学)は、カスハラへの企業の責任を問う裁判は「あまりない」とし、「日本には『お客さまは神様』という概念が根強く、残念ながら放置されてきた。従業員は後ろ盾がなく苦しんでいる」と指摘。「今回、原告の訴えが認められれば、労働者が安心して働ける環境へのステップアップになる」と話した。(竹谷直子)

カスタマーハラスメントを巡る国の動き 改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の2020年6月施行に向けて、厚生労働省は同年1月、顧客等から著しい迷惑行為があった際、事業主が行うことが望ましい取り組みの内容を示した指針を発表。指針では速やかな被害者への配慮や、行為者への「適正な措置」などを挙げた。厚労省と関係省庁はカスハラ防止のための検討会議を重ねており、21年度内に企業向けのマニュアルを作成する。

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