週のはじめに考える 会えば会うほどに

2021年11月28日 07時14分
 人と人が会う。この当たり前のことが、ここ二年ばかり、少し特別なことになってしまいました。もちろん例の疫病のせいです。当然、外国人の入国も厳しく制限されました。水際対策の重要性は論を俟(ま)ちませんが、やはり異常な状態であることも確かで、「鎖国」と表現する向きもあったほど。最近、感染状況が落ち着いたことを受けて、制限は少し緩和されましたが、コロナ以前にはほど遠い状況が続いています。
 インバウンド需要が蒸発した観光業をはじめ、特に経済面でさまざまな問題が出来(しゅったい)しているのは周知の通りです。しかし、そのことの影響を、経済とは少し違う角度からも心配しています。
 きっかけは何であれ、旅先や留学先に日本を選んでくれるのは、ありがたいことです。例えば、アニメが好きで日本に旅行に来た人が、和食とか相撲とか別の文化にも接し、何にもまして生身の日本人に接することで、日本への理解が一層深くなる。このことの意味は決して小さくないと思います。

◆イメージ変える訪日経験

 日本の民間非営利団体「言論NPO」と中国国際出版集団が共同世論調査の結果を先月、明らかにしました。それによれば、日本に「良くない」印象を持つと答えた中国人は前年比13・2ポイント増の66・1%。残念ながら、ここ数年、好転が続いていた対日観は悪化しました。この結果を、言論NPOの代表は「(コロナまん延で)訪日観光客が途絶えたことも大きい」と分析しています。
 例えば、五年前の同様の調査では、訪日経験がない中国人で日本に「良い」印象を持つ人は16%にすぎなかった。ところが、訪日経験のある人になると、58・8%に跳ね上がるのです。肌身でリアルな日本や日本人と接することの意味の大きさが分かります。
 ことほど左様、外国人が入国できない期間が長引けば、日本への理解を深めてもらう機会がそれだけ失われるということです。変異株警戒などは決してゆるがせにできませんが、一日も早く外国人への門戸を全開にしたいものです。
 ただ、コロナ禍が普及を促した新たな「人と人が会う」方法については可能性も感じます。オンライン会談や会議のことです。
 昨年来、多くの国際会議がオンラインで行われ、最近ではバイデン米大統領と中国の習近平国家主席の会談も、そうでした。
 無論、「膝詰め談判」とか「鳩首凝議(きゅうしゅぎょうぎ)」とか、体温まで感じられるような「密」な接触とは比べられませんが、画像と音声で必要最低限の意思疎通は可能なコミュニケーション法ではありましょう。当然、たとえ「口角泡を飛ばす」ことになっても感染のリスクは皆無ですが、もう一つ見逃すことができないメリットが。それは、圧倒的な手軽さです。
 例えば、あの米中首脳会談も、もしリアルなら、大勢の随行者が渡航することになり、厳重な警備も大がかりな歓迎準備なども必要に。見当もつきませんが、とにかく莫大(ばくだい)な費用がかかるのは間違いありません。コストだけでなく、移動に時間も要しますから日程調整も簡単にはいかないはずです。その点、オンラインなら、比べようもないほど安く、早く、手軽。どちらが出向くか、といったメンツの問題も生じません。
 そこで想起したのが「シャトル外交」です。シャトルとは、機織りで横糸を通すための「杼(ひ)」のこと。忙しく二点を行ったり来たりする動きを二国間を頻繁に往来する外交にたとえてそう呼ぶわけですが、いろんな国と国の首脳がオンラインで、そのシャトル風会談をやってはどうかと思うのです。

◆頻繁なオンライン会談を

 心理学ではザイアンス効果(単純接触効果)と言うようですが、私たちには人やモノに接触する機会が多いほど、その対象に好意を抱くようになる傾向があるのだとか。「頻繁に会っている」のに、「好意を抱いていない」では認知的な不協和が生じるので「頻繁に会っている以上、好意を持っているはずだ」という心の動きが生じる−。確か、そんな解説もどこかで読んだ覚えがあります。
 何にせよ、首脳同士だって頻繁に会談していれば互いに好印象を持ちやすくなる、という理屈でしょう。それで難題も一気に解決とはいかないにしても、建設的な議論や交渉にとってマイナスにはなりますまい。もし無用ないがみ合いが減るならもうけものです。
 リアルな会談はハードルが高いとしても、オンラインならうんと容易。そこら中の首脳が、構えず気軽に頻繁に画面と音声で会談するようになったら…。世界は少し穏やかになるのではないか、と夢想します。コロナ後も含め、新たな外交文化として定着させていく手はないものでしょうか。

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