<記者だより>どぶろくと焼き肉

2021年11月28日 07時22分
 在日コリアンが集住する川崎市の桜本・池上地域を巡るフィールドワークに参加した。戦後の混乱期、職を失った朝鮮人たちがどぶろくを造り、日本人に売って生計を立てたという。
 税務署の摘発のたび、かめを壊し、どぶろくを捨て、造った量が分からないようにした。「どうせ捨てるなら」と豚にどぶろくを飲ませたら、酔っぱらってふらふらになったエピソードもある。摘発の報復を受けて殉職した署員を伝える碑は、今も川崎南税務署の前にひっそりとたたずむ。
 「酒の密造は違法だが、朝鮮人たちが生き延びるためにできることも限られた。復員や引き揚げ者の増加で雇用差別が起き、追い込まれた状況は当時の裁判資料からも分かる」。フィールドワーク主催団体の山田貴夫さんはこう読み解く。
 焼き肉も在日の人たちが育んだ文化だ。捨てられるはずの牛や豚の内臓を洗ってたれに漬け込み、川崎南部で働く労働者たちの食に供された。たくましく生きてきた人々の歴史を知れば、この町で食べるホルモンとマッコリは一層、胃にしみる。(安藤恭子)

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