<社説>中国テニス選手 消息不明という深い闇

2021年11月29日 07時21分
 中国の有名な女子プロテニス選手、彭帥(ほうすい)さん(35)が消息不明になった問題は、当局に批判的な言動をした人物の動静が分からなくなるという中国の闇を露呈させたといえる。
 発端は二日に短文投稿サイトに彭さんのものとみられる投稿があったことだ。張高麗元副首相に性的関係を強要されたとの告白だ。
 投稿は二十分後に削除され、彭さんの動静は途絶えた。トップ選手の「失踪」だったのに、中国国内では報じられなかった。
 かりに高官のからむ醜聞であっても、中国政府はきちんと事実関係を調べ、国民に明らかにするべきである。これまでの対応は隠蔽(いんぺい)工作と批判されても仕方がない。
 中国では共産党や政府への批判は許されず、公然と声を上げた人が一時的にせよ動静不明になったケースはこれが初めてではない。
 電子商取引大手、アリババグループ創業者である馬雲(ジャック・マー)氏は昨年、講演で金融当局を批判した後、三カ月ほど表舞台から消えた。その間の消息はいまだによく分かっていない。
 犯罪容疑などで拘束されたわけでもないのに、当局に不都合であったり、不興を買った人物の姿が突如、公の場から消えうせるというのは、法治があり、人権が守られている国で起こることではない。国際社会が中国への不信感を強めるのは当然だ。
 彭さんの「失踪」が長引き、その安否に国連や欧米諸国からの懸念が強まった。さらに、北京五輪開催国としての適格性に疑問の声が広がると、国営メディアなどが彭さんのものとされるメールや動画を次々と公表した。
 だが、中国国内では使用が禁じられているツイッターを利用しての公表であった。彭さんの自由と安全を国際社会向けにPRするための宣伝にしか見えない。
 北京五輪が迫る中、国際オリンピック委員会(IOC)の中国寄りな対応も気になる。IOCはバッハ会長と彭さんがテレビ電話で対話し「自宅にいて、元気で安全だと説明を受けた」と発表し、その映像は国際ニュースで流れた。だが、中国のIOC委員も同席していたという。彭さんが自分の意思で対話に参加し、自由に発言できたかどうか疑問が残る。

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