<社説>防衛費補正予算 膨張に歯止めかけねば

2021年11月29日 07時22分
 政府が二十六日に閣議決定した二〇二一年度補正予算案で、防衛費は七千七百三十八億円と過去最大となった。補正としては異例の規模だ。第二次安倍内閣以降、増額が続く防衛費を、補正でさらに積み増せば、膨張に歯止めがかけられなくなる。再考を求めたい。
 補正予算案には、通常当初予算に盛り込む主要装備品の新規購入が計上された。哨戒機や輸送機、ミサイル、機雷・魚雷の取得などで計二千八百十八億円に上る。
 防衛省は中国や北朝鮮の軍備増強を踏まえ、南西諸島防衛やミサイル対処能力の強化を急ぐ必要があると説明する。
 しかし財政法は補正予算について、当初予算編成後に生じた理由で「特に緊要となった経費」などに限ると規定する。中朝の軍備増強は最近、突然始まったことではない。補正予算による主要装備品購入がなぜ緊要か、防衛省は合理的な説明ができるのだろうか。
 補正予算と、過去最大を更新した当初予算と合わせた二一年度防衛費の総額は六兆一千百六十億円。国内総生産(GDP)比約1・09%に当たり、歴代内閣が目安としてきた1%を超える。
 防衛政策は、安全保障環境の変化に応じて柔軟に対応する必要があるとしても、防衛費の急拡大は日本に軍事大国化の意思ありとの誤解を周辺国に与え、逆に軍拡競争を加速する「安全保障のジレンマ」に陥りかねない。
 防衛費増額の背景に、同盟国に軍事費をGDP比2%以上に増額するよう求める米国への過剰な配慮があるのなら見過ごせない。
 政府は、二一年度補正予算と二二年度当初予算を一体の「防衛力強化加速パッケージ」と位置付ける。補正予算による主要装備品の新規購入は、二二年度概算要求に盛り込んだ調達計画を前倒ししたものでもある。
 当初予算案なら通常、衆参両院で約二カ月間審議されるが、補正予算案の場合、衆参合わせても数日間にすぎない。本来、時間をかけて慎重に審議すべき防衛装備の調達案件を、審議時間が限られる補正予算案に計上する手法自体が適切とは、とても言えない。
 主要装備品の新規購入を二一年度補正で先取りしたのなら、二二年度当初予算案から大幅に減額しなければつじつまが合わない。厳しい財政状況の下、防衛費の歯止めなき膨張は許されない。

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