この冬、値上げする食品は?小麦粉、冷凍食品、お菓子…回復に向かう経済に逆風

2021年11月30日 06時00分

小麦粉の価格上昇の影響について語る小嶺忠さん=東京都品川区の武蔵小山商店街で

◆原油の高騰で原料や物流費が上昇

 食料品の値上げが12月から相次ぐ。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、中国や米国を中心に経済活動の再開が本格化する中、世界的な食料需要の高まりに加え、原油価格の高騰で原料費や物流費が上がっているためだ。冷凍食品やしょうゆなど身近な物も多く、家計負担がじわりと増す冬になりそうだ。
 外食チェーンを展開するロイヤルホールディングスは12月1日、インターネット上で販売する冷凍食品を値上げする。冷食製造のマルハニチロも11月29日、白身魚の揚げ物など99品を来年2月1日の納入分から値上げすると発表した。担当者は「小麦粉など原材料価格の上昇が影響している」と話す。

◆企業努力だけでコスト吸収できず

 味の素冷凍食品も、ハンバーグなどの出荷価格を引き上げる。担当者は海外産の牛肉価格の高騰を念頭に「企業努力だけでコストを吸収できない」と話す。
 製粉大手のニップンは、家庭用の小麦粉やパスタの出荷価格の引き上げを決定。山崎製パンも食パンなどを値上げする。原料費に加え「工場の電気代や配送の軽油代が軒並み上がった」(担当者)ためだ。原油高は「オミクロン株」への懸念から一時的に下がったが、長期的には高値で推移しており、今後も影響が出そうだ。
 第一生命経済研究所の永浜利広氏は「穀物価格の上昇がパンや調味料などの値上げにつながった」と、世界的な小麦や大豆の相場上昇も指摘した上で、「家計に占める食費の割合が高い低所得者の負担が増えかねない」と懸念した。
 食品メーカーを中心に相次ぐ値上げの動きは、消費者に身近な飲食店にも波及し始めた。原材料品の値上げを販売価格に反映するのも難しく、コスト削減で値上げを吸収しようと苦慮す企業も。調理器具や文具など日用品の価格上昇も見られ、コロナ禍から回復途上の飲食店や個人消費に冷や水を浴びせそうだ。

◆菓子類など食パン以外は売れにくく

 「お客さんの財布のひもが固くなっている」。東京都品川区にある武蔵小山商店街で、パン店「こみねベーカリー」を営む小嶺忠さん(51)は、1人当たりの購入金額が減っていると明かす。最近、目につくのは買い物客の動きの変化だ。「菓子類など食パン以外のものは売れにくくなった」。
 売り上げが減る中、パンの原材料となる小麦の価格高騰は経営の重しとなり得る。小麦は国が輸入して製粉業者に売る仕組みとなっており、この売り渡し価格は今年10月~来年3月に前期比で19%上昇。小嶺さんは、仕入れ先から年明けに小麦を値上げすると通知を受けており、「店頭価格を上げざるを得ない」と嘆いた。
 大田区でビアレストランを営む女性経営者(43)も、「輸入牛肉の値上げを仕入れ先から伝えられた」。12月分から仕入れ価格が引き上げられるという。だが、「緊急事態宣言の解除後に戻って来た利用客に負担をかけたくない」と値上げはしない。使う肉の部位を変えるなどで原価を抑え、持ちこたえる考えだ。

◆飲食だけでなく、鋼材や文具も

 値上げの動きは飲食関連だけにとどまらない。例えば、ステンレスなどの鋼材価格は「米中の需要増で高騰している」(エコノミスト)。製鉄メーカーは相次いで値上げを発表。豊島区の雑貨店で働く50代の女性店員は「10月からステンレス製の鍋の仕入れ値が上がったので、(店頭価格を示す)値札を張り替えた」と打ち明ける。
 この他、コクヨは、はさみやホチキスなど20品目の文具を来年1月から平均で約8%値上げ。部品に使う鋼材の価格が高騰したためだ。食料品や日用品が値上がりしている現状に、ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は消費者心理の冷え込みを懸念。「コロナ禍から回復しつつある経済への逆風になる」と指摘した。(大島宏一郎)

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