一月に亡くなった、作家の半藤一利さんは「絶対」という言葉を…

2021年11月30日 07時03分
 一月に亡くなった、作家の半藤一利さんは「絶対」という言葉を嫌っていた▼戦争中、「日本は絶対に勝つ」とか「絶対、神風が吹く」と聞かされたが、「絶対」はなかった。一九四五年三月の東京大空襲で九死に一生を得て「二度と絶対という言葉を使うまい」と誓ったそうだ▼根拠のない絶対という言葉にもう踊らされたくない。そんな決意だったのだろうが、戦争とは無関係でもあり、この「絶対」だけは許していただけまいか。「絶対大丈夫」。今年の日本シリーズを制した、ヤクルトスワローズの合言葉である▼元はシーズン中の高津監督の言葉である。チームが一枚岩になれば崩れない、「絶対大丈夫」。すべての試合が二点差以内というしびれる展開になった日本シリーズでピンチにも動じないスワローズの戦いぶりを見れば、その言葉にはやはり不思議な力があったのだろう。昨年最下位だった球団の日本一がうれしい▼三月にスワローズファンの小学生のことを書いた。優勝はまだまだ先で五位だろうとずいぶんと大人びた予想をした少年の話である▼あの子がこの優勝を何と言っているのか知りたいと読者から連絡をいただいたが、残念ながら会えないでいる。以前なら早朝、自宅前でバットを振っていたが、最近はその姿がない。中学受験だそうだ。おそらくは「絶対大丈夫」の言葉を信じて机に向かっている。

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