<深堀隆介展 この1点>(1)《金魚酒 命名 出雲なん》2019年 この枡の中だけに彼は存在

2021年12月1日 07時20分
 金魚酒(きんぎょしゅ)とは、最も長く制作し続けている作品シリーズである。枡(ます)の中の金魚は、私が脳内で創造した架空の金魚で、どこにも存在しない品種だ。まさにこの枡の中だけに彼は存在する。私は、約18年間金魚酒を描き続けた結果、だんだんと金魚のリアルさも増し、今まで表現できなかったことも描けるようになってきた。その中でも近年、自分の持てる描画技術を駆使して制作したのが、この「出雲なん」だ。2.5Dペインティング(※透明樹脂の表面にアクリル絵の具で金魚を描き、さらにその上から樹脂を重ねてまた描くことを繰り返す、深堀独自の技法のこと)を用いると、丸い金魚の体にミルフィーユ状の断層が見えやすく、それが見えないように描くためにはある一定の描画技術を要する。この金魚の体の表現には本当に苦労した。そうして出来上がった「出雲なん」は、お気に入りの金魚酒の一つとなった。
 余談だが、出雲地方には特別な思いがある。昔、島根県仁多(にた)郡奥出雲町八代に祖母が住んでおり、小さな診療所を営んでいた。その祖母が亡くなって空き家になった診療所で、私は近所の人たちを招いて小さな展覧会を行った。それが私の作家としての最初の展覧会となった。(現代美術家・深堀隆介)
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 金魚をテーマとした創作活動で知られる現代美術家・深堀隆介の個展「金魚鉢、地球鉢。」が、2日から来年1月31日まで上野の森美術館で開催される。注目の出展作品を、深堀自らに解説してもらった。
 ※次回は8日掲載

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