コスプレで差別をはね返す黒人女性「自分が何者か、自分が決める」

2021年12月1日 12時00分
 黒人であるが故に受ける差別のまなざしに、アニメや漫画のキャラクターに扮する「コスプレ」で対抗する女性がいる。京都市に住む米国出身のコスプレーヤー、ミス・スジュさんだ。「黒人のコスプレを、悪意を持ってからかう人たちがいる。でも、私は自分自身を堂々と表現する」と力を込める。(林啓太)

コスプレすることで人種差別にあらがおうとするスジュさん(中央)=京都市左京区で

◆コスプレで「新しい自分を見つけられる」

 京都市内で9月中旬に開かれた「京都国際マンガ・アニメフェア2021」。スジュさんは女子高生の制服姿で会場を闊歩かっぽした。ふんしたのは、人気アニメ「鬼滅きめつやいば」のキャラクターが、現代の学校の教師や生徒になって繰り広げるコメディー作品「キメツ学園!」に登場するセーラー服の竈門かまど禰豆子ねずこ。髪飾りと同じ薄ピンクの手提げかばんに、禰豆子がくわえる竹と同じ緑色のスカーフ姿でポーズを決めた。
 「禰豆子は、かわいいだけじゃなく、強いところも好き」と笑うスジュさん。ほぼ完璧に再現したコスプレのうち、髪形だけは、髪を多くの束に分けてそれぞれを細かく編んだ「ブレイズ」。「私のルーツのアフリカ文化を表現した」と言う。
 米シアトル出身。小学生の頃から「美少女戦士セーラームーン」などの日本のアニメをテレビで見て「キャラのスタイルの良さや、物語の作り込みの深さ」にはまった。地元のアニメイベントでコスプレを楽しみ、インターネットの会員制交流サイト(SNS)に写真を投稿してきた。

スジュさん(右から3人目)=京都市左京区の平安神宮で

 アニメのキャラに変身する魅力は何か。スジュさんは「キャラの魅力あふれる個性が、自分の中に宿ったよう。自由に新しい自分を見つけられる」と強調する。
 時には衣装を自分の手で縫い、小道具を手作りする。写真を撮る時はかつらの髪形を慎重に整え、キャラを通じて「自分らしさ」が表れるポーズを工夫する。「アニメキャラを扮装ふんそうで表すには、アーティストの感覚が必要。画家や彫刻家と同じようなセンスが問われる」という自負もある。

◆闘う原動力は禰豆子の言葉

 アニメ好きが高じて2019年8月に来日し、京都市内の小中学校の外国語指導助手(ALT)に。その京都で、コスプレへの向き合い方を変える出来事があった。米国で20年5月に黒人男性が白人の警官に暴行されて死亡した事件。「人ごとじゃない」と、会員制交流サイト(SNS)で差別反対デモへの参加を呼び掛けた。京都市内で行ったデモでは、約500人の先頭で「ブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命も大切だ)!」と叫んだ。
 5歳の時に白人の友人に「肌が汚い」と言われて以来、差別に苦しんできた。根底にあるのは「黒人は劣った存在だ」という偏見。「黒人は万引をすると疑われる。お店では、商品には絶対に触らない」。日常の緊張感や屈辱も、やむを得ないこととして受け入れてきた。
 BLMの運動に関わる中で、コスプレは「楽しい」だけでなく、「人種差別に対抗する手段でもある」とも考えるようになった。「なりたいキャラになるのは、自分が何者であるかを他者ではなく自分が決める、ということ。差別のまなざしをはね返せる」と力を込める。

メガホンのマイクを取り、「ブラック・ライブズ・マター」を訴えるスジュさん(右)=京都市内で(本人提供)

 「ポケモン」に登場する少女カスミに扮した時、人種差別の俗語とともに「カスミは黒人じゃない」とSNSに書き込まれた。思いを込めたコスプレさえ、あざ笑われることがあるけれど、もう差別には屈しない。「黒人だけでなく、性的少数者(LGBT)とか、他者の視線に縛られがちな全ての人たちを、私のコスプレで元気づけたい」。スジュさんの胸に今熱くこだまするのは、禰豆子が漫画で語った言葉だ。
 「幸せかどうかは自分で決める 大切なのは“今”なんだよ 前を向こう 一緒に頑張ろうよ 戦おう」

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