<社説>イラン核交渉 実利重視で知恵を絞れ

2021年12月2日 07時27分
 イラン核合意の再建に向けた米国とイランの間接協議が五カ月ぶりに再開された。双方の溝は深いが、決裂は中東に核の拡散を招きかねない。建前を超えて、実利に基づく両者の妥協を促したい。
 核合意は米オバマ政権当時の二〇一五年に結ばれた。イランが核開発を制限することと引き換えに国際社会が対イラン制裁を段階的に解除するという内容だった。
 ところが、米国でトランプ政権が誕生するや、同政権は合意を一方的に破棄し、イランに対して約千五百に上る制裁を発動した。
 その後、登場した米バイデン政権は核合意復帰を公約しつつも、国内の親イスラエル勢力などに配慮し、速やかな展開を手控えた。
 その間、イランでは六月の大統領選で、穏健派から反米保守強硬派へ政権が移行。このため、交渉環境は厳しさを増している。
 米国は核開発以外にもイランのミサイル開発停止などを合意復帰の条件に挙げ、イランは米国に無条件の復帰を求めている。溝は深いが、諦めるわけにはいかない。
 というのも、イランのウラン濃縮は現在、核合意で定めた濃縮度上限の3・67%をはるかに超え、60%に達している。核兵器製造に必要な90%まであとわずかだ。
 イランが核兵器を持てば、近隣の湾岸アラブ諸国も核保有に動くのは必至。イスラエルとイランはサイバー戦や船舶攻撃で応酬し、地域の緊張は高まっている。
 建前での行き詰まりを打開するには、米国、イラン双方に実利のある道を示す必要がある。イランでは、制裁による国民生活の苦境が深刻だ。政権が代わっても好転しない経済状況に、国民はいら立ち、各地で水不足を契機に農民らの政府批判が高まっている。現政権にとっては深刻な脅威で、制裁解除は求心力回復に不可欠だ。
 バイデン政権は中国への対抗を外交の主軸に据えるが、イランは中国との関係を強化している。制裁解除をカードに両国の接近にくさびを打ち込む選択もある。さらに米国は原油価格高騰から備蓄原油の放出に踏み出したが、イラン原油の禁輸を緩和すれば、需給状況を好転させることも可能だ。
 建前だけでは動かない状況を実利をテコに揺さぶる。そこに妥協の余地をつくる。信頼回復への双方の歩み寄りを促すために、両国とパイプのある欧州各国や日本はいま一度知恵を絞るべきだ。

関連キーワード


おすすめ情報