<どうする相続>遠距離介護もめる前に 出費の記録 家族で共有 事前に親の経済状況確認

2021年12月2日 10時08分
 離れて暮らす親の生活を応援する「遠距離介護」。距離が壁となるのはもちろん、仕事や子育てなどで多忙であれば頻繁には行き来しにくい。家族間でコミュニケーションが取りづらくなり、お金のことでもめるケースも。遺産相続を巡る「争族」を防ぐためにも、親が元気なうちに要望を聞いておき、介護時の入出金を記録するなどしたい。 (砂本紅年)
 東京都内に住む六十代男性は八年前、一人暮らしの八十代の父を介護するため、毎週末、新幹線で東北地方の実家に通っていた。父は認知症が進行し、金銭管理ができなかったため、男性が父の通帳を預かっていた。すると、めったに実家を訪れず、疎遠だった他県在住の妹から、弁護士を通して父の預貯金を使わないよう求められた。

◆使い込み疑われ

 妹は使い込みを疑い、男性に尋ねることなく弁護士に相談したらしい。男性は「父にかかる費用以外は一切使っていないのに」と心外だった上、父の死後は、妹に遺産分割調停を申し立てられた。調停は成立せず、審判で争うに至り、兄妹の縁は切れたという。
 「親のお金に関する情報は、きょうだいで共有しましょう。善かれと思ってやったことも、後で知った側は嫌な気持ちになる」。遠距離介護の情報発信などに取り組むNPO法人「パオッコ」(東京)の太田差恵子理事長(60)は話す。
 親の介護で複数のきょうだいが関わると、誰が何にお金を使ったか分からなくなり、トラブルになりやすい。親の突然の入院に対応するため、誰かが入院保証金や下着類などの費用を支払っていることもある。親にかかったお金の入出金は記録し、共有しておきたい。「メールや家計簿アプリなどを活用するのも手」

◆費用 誰が負担?

 遠距離介護の場合、交通費や通信費もかかる。パオッコが十年前に行ったアンケートでは、回答した約五百五十人の半数近くが、帰省の交通費の一部または全額を親からもらっていた。
 一方で、実家の近くに住むきょうだいの方が、訪問回数が多く、介護に費やす時間が長いことも。初期は問題にならなくても、介護が長期化するうち、遠方のきょうだいだけが交通費を受け取ることに対する不公平感が生まれることがある。太田さんは「介護が始まる前に、家族全員で誰がどのように負担するか相談して」と呼び掛ける。
 親の介護費用をどう工面するかは、遠距離介護でなくとも悩ましい問題だ。太田さんは「原則、親のお金を充てる。介護費用はいくら『かかるか』ではなく、いくら『かけられるか』」と強調。まず親が元気な時から経済状況を確認するよう促す。預貯金や年金額、借金などのほか、住民税課税世帯かどうかも分かると、公的サービスを利用する際などの参考になる。
 だが、帰省時にぶしつけにお金のことを聞くと、親を不愉快な気持ちにさせる恐れもある。「普段から親子のコミュニケーションを密にして信頼を得ることが大切。強引に聞かないように」と太田さん。「知人の親が突然倒れて苦労したらしい」などの事例を話題にしたり、確定申告などの手続きのついでに聞いたりするのもいい。
 金融口座が複数ある場合は、引き落としを年金口座に統一するなど整理するよう助言。保険証、キャッシュカードや保険証券の置き場所や金融機関の暗証番号も確認しておきたい。ただ、金融機関で出金できるのは原則として名義人のみ。本人が認知症などになった場合に備え、代理人指定などの対策を調べておくことも肝心だ。

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