内戦被害者の人生取り戻す2人の技師、義足3000本に込めた願い 中東オマーン

2021年12月2日 17時00分

11月中旬、オマーン南部サラーラで、義足を作るアルハサンさん(手前)とオズゴルさん=蜘手美鶴撮影

 人生を取り戻す手伝いを—。中東のオマーン南部サラーラで、内戦の被害者たちに義足を作り続ける2人の技師がいる。シリア人のアンマール・アルハサンさん(31)と、トルコ人のイブラヒム・オズゴルさん(42)が約10年間で作った義足は3000本を超える。2人が働く施設には、隣国イエメンから内戦で手足を失った人たちが訪れ、体にぴたりと合った世界にたった一つの義足を作っている。(オマーン南部サラーラで、蜘手美鶴)

◆調整はミリ単位

 型どりした義足を抱え、出っ張った箇所を丁寧に削っていく。手触りや経験を頼りに、ミリ単位以下の調整に集中する。「靴に小石が入っていたら歩くたびに痛いでしょう。それを思いながらいつも作っている」。アルハサンさんが使い手の気持ちを考えていると話すと、傍らで作業していたオズゴルさんが「正確さが最も大切だ」と付け加えた。
 2人の働く「アラブ義足センター」には1カ月半に1度、イエメンから手足のない50人ほどがやってくる。ある日突然、1発の地雷や空爆で人生が大きく変わった人たちだ。

◆1人でも学校へ

11月中旬、オマーン南部サラーラで、新しい義足を付けたアルサブリ君(家族提供)

 イエメン中部マーリブのアンマール・アルサブリ君(11)は11月初旬、ここで新しい義足を得た。関節があり、軽くて体にぴたりとフィットする。うれしくて、顔のにやけが止まらなかった。
 2016年夏の夕暮れ。自宅前の路地で遊んでいたら、空からミサイルが降ってきて、友だち8人と右足を失った。現地で作った木製の義足を着けたが重くてすぐ外れ、次第に外出もしなくなっていった。
 新しい義足になって一番うれしいのは「1人で学校に通えること」といい、「お医者さんが『練習すればもっと歩けるようになる』と言ってくれた。頑張って練習したい」と電話越しに声を弾ませた。

◆被害者は途絶えないが…

オマーン南部サラーラで11月上旬、新しい義足をつけた男性と歩行訓練をするオズゴルさん㊨=アラブ義足センター提供

 センターはドイツ製の機材を備え、軽くて強度のある義足作りに関しては「中東一」(関係者)。患者らは1カ月ほど滞在し、義足を作った後は日常生活を送る訓練やカウンセリングを受け、イエメンに帰っていく。センターはトルコの慈善団体が運営し、義足の製作費や滞在費を全て負担する。
 2人は約8年前にトルコの医療施設で知り合い、その後イエメンの施設に一緒に移り、1年あまり前からサラーラで共に働く。トルコではシリア内戦の被害者に義足を作り、イエメンでも同様の内戦被害を目の当たりにした。作っても作っても、途絶えることのない被害者を見ると、気持ちがふさぐこともある。ただ、義足を得た人の表情を見ると、オズゴルさんは「言い表せない喜びが湧いてくる」という。
 新しい義足を身に着け、ある人は静かにほほ笑み、ある人はただ涙を流す。無言で強く抱き締め、全身で感謝を伝えてくれる人もいる。「足を失った瞬間に、その人の時間は止まる。義足を作ることで人生を取り戻す手伝いができるのは、最高の幸せだ」と話す。

関連キーワード


おすすめ情報

国際の新着

記事一覧