<ワールド経済ウオッチ>旧ソ連の世界一危険な原発が岐路に 活断層近くで格納容器がないまま40年も運転

2021年12月2日 12時39分
 旧ソ連アルメニアにある「世界一危険な原発」が岐路を迎えている。活断層近くに立地し、格納容器がない設計で約40年も運転を続けてきた。だが、太陽光発電の導入が急速に広がり、原発の廃止を求める声が出ている。(メツァモール村で、小柳悠志、写真も)

「世界でもっとも危険な原発」と呼ばれるメツァモール原発

◆有害物質が漏れている気もするが…「考えないように」

 「世界一危険」と欧米で揶揄やゆされてきたのは、アルメニアで唯一の原発「メツァモール原発」。現在残る2号機は1980年に運転を開始、86年に事故を起こしたウクライナのチェルノブイリ原発と同じくソ連が開発した。周囲にはスイカ畑が広がる。

スイカ栽培が盛んなメツァモール原発周辺

 「有害物質が大気に漏れ出している気もするが、深く考えないようにしている」。近くの考古学博物館の職員はこう話す。
 メツァモール近くには3つの活断層があり、地震で制御不能となる可能性がある。昨年には、隣国アゼルバイジャンがメツァモール原発をミサイルで攻撃する可能性を示唆した。
 それでも「国の独立を守るには危険な原発でも維持するしかない」との声が大勢だった。背景には、アゼルバイジャンや西の隣国トルコと関係が悪く、電力自給が必須だからだ。国内の電源構成は原発が長らく4割を占めた。

◆3.11で脱原発論が噴出も...「核の傘」が阻む

 潮目が変わったのは2011年、東京電力福島第一原発事故だ。世界で太陽光発電への投資が加速し、発電パネルの価格が低下。アルメニアでも民家にパネルを設置するための補助金制度が導入された。アラブ首長国連邦(UAE)からメガソーラー建設の巨額投資も行われ、30年には国内の消費電力量の15%が太陽光になると予想される。
 「原発は今となっては必要ではない。稼働して残るのは事故のリスクだけ」。首都エレバンの土産物店主グラシュさん(69)は、最近になって脱原発派に転じたという。国土の大部分が標高1000メートル以上の高原にあり、晴天の日も多い。「水力発電に使える川の水も多く、この国は自然エネルギーが豊かだ」とエレバンの自営業者の女性も語る。
 現地メディアでも脱原発論が広がるが、一筋縄ではいかなさそうだ。原発運営にはアルメニアと同盟関係にあるロシアが関わっており、脱原発は旧ソ連圏の「核利用の傘」からの離脱を意味する。外交筋は「アルメニアの脱原発はロシアとの関係次第」と指摘する。
 アルメニアのエネルギー専門家バゲ・ダフチャン氏によると、ロシア国営原子力企業はメツァモール原発を36年まで稼働させることも視野に入れた改修を行った。原発を延命させ、廃止論を先送りさせる意図とみられる。

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