先進国で一人負けの賃金上昇率、波及力低下した春闘...コロナ禍の賃上げのハードルは

2021年12月2日 20時37分
 連合は2日、中央委員会を開き、2022年春闘の方針を決めた。基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給分を合わせ「4%程度」の賃上げを目指す。先進国の中で日本の賃金上昇率は一人負けを続け、安倍政権が「官製春闘」を始めても低迷の基調は変わらなかった。賃上げが日本経済最大の課題に浮上する中、労働組合の組織率低下や非正規の増加などの難題を抱えたまま、コロナ禍の春闘が始まる。(渥美龍太、山田晃史)

◆官製春闘の勢いに衰え

 「政府の発言だけでは賃金の改善は実現しない」。連合の芳野友子会長は中央委のあいさつで、こう述べた。安倍政権が14年に始めた官製春闘の勢いが衰えたことが背景にはある。
 厚生労働省によると、春闘の賃上げ率は3年連続で低下。21年はコロナ禍の影響もあって1.86%と8年ぶりに2%を割った。これは大企業の実績であり、中小規模に対象を広げると伸び率はさらに低い。
 岸田文雄首相は11月に3%超の賃上げを経済界に求めたが、山際大志郎経済再生担当相は「民間の賃金を政府が強制的に『こうしろ』と言うのには限界がある」と述べた。

◆労組加入者、2割満たず

 賃金が上がらない大きな理由は、春闘の波及力が低下しているためだ。労働組合が共同して賃上げを求める運動なのに、労組加入者は労働者全体の2割に満たない。中小企業の多くは労組がないことや、労組に加入しない非正規が増えたことが背景にある。
 中小零細企業が商品を大企業に買いたたかれ、賃上げの余力を失う問題もある。賃上げ原資の取り合いにつながる「極めて神経質な論点」(連合幹部)であり、芳野会長も是正の状況を「不十分」と認める。
 春闘けん引役のトヨタ自動車労組などが、ベアの要求額を非開示にするなど共闘は形骸化した。今年も経済団体から「上げられる企業が上げてほしい」との発言が相次ぎ、各社バラバラの様相は強まりそうだ。

◆「連合の限界。存在感失った」

 20年の調査では、非正規の賃金は正規より3割以上も低い。法政大の浜村彰教授(労働法)は「正社員の雇用維持を第一にしてきた連合の限界ともいえる。賃上げでの存在感を失ってしまった」と指摘した。
 日本総研の山田久氏は専門家が適正な賃上げ水準を示し、労組の要求を後押しする仕組みを提案。その上で「連合も産業別の組織を強化して経営側との交渉力を高める努力が必要ではないか」と話している。

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