<新かぶき彩時記>「九段目」戸無瀬とお石 火花散る 女の対決

2021年12月3日 07時16分
 雪景色の中、女性同士の対決で火花が散りそうなのが「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」の九段目。
 城中で高師直(こうのもろのう)に刃傷に及んだ塩冶判官(えんやはんがん)を止めた加古川本蔵。その妻・戸無瀬(となせ)は、本蔵の娘・小浪(こなみ)の継母です。小浪の許嫁(いいなずけ)は、塩冶の家老・大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)の息子・力弥(りきや)。力弥を慕う小浪を慈しむ戸無瀬は、進展しない嫁入りに片をつけるべく、京都・山科の大星の仮宅を小浪と訪れます。
 応対に出たのは由良之助の妻・お石(いし)。実は由良之助と力弥は、秘(ひそ)かに師直邸への討ち入りを決めており、小浪につらい思いをさせたくない思惑もあってか、お石は縁組を頑(かたく)なに拒みます。
 お石が「うちは浪人中で無給だから、そちらとは金銭的に釣り合わない」と言えば、戸無瀬は「うちは五百石で、そちらは本来は千五百石。千石低くても縁組したのに、今は五百石の違いではないか」。するとお石は「心の釣り合いがとれないので婚約は解消する」と冷たい対応で、戸無瀬が「こりゃ聞きどころお石さま」と気色ばむ台詞(せりふ)が有名です。忠臣蔵は終始金銭がらみと言われますが、この場も同様。お石が本蔵を快く思っていないのも本心であり、「師直に金銀で媚(こ)びる本蔵どの」とまで言い放ちます。最後は本蔵の思わぬ登場でわかり合う二人ですが、戸無瀬は立女形の役、お石も二番手の力量が求められます。(イラストレーター・辻和子)

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