<全文>岸田文雄首相の所信表明演説 第207回臨時国会
2021年12月6日 14時36分
四 経済回復に向けた支援
通常に近い経済社会活動を取り戻すには、もう少し時間がかかります。
それまでの間は、断固たる決意で、新型コロナでお困りの方の生活を支え、事業の継続と雇用を守り抜きます。
かねてより申し上げているとおり、経済的にお困りの世帯、厳しい経済状況にある学生、子育て世帯に対し、給付金による支援を行います。特に生活に困窮されている方には、生活困窮者自立支援金の拡充など、様々なメニューを用意します。総額7兆円規模を投入します。
事業者向けには、2.8兆円規模の給付金により、事業復活に向けた取組を強力に後押しします。
ワクチン・検査パッケージを活用した行動制限緩和の方針に基づき、通常に近い経済社会活動の再開に取り組みます。
安全・安心な形で、新たなGoTo事業などの消費喚起策を行う準備も進めます。
しかしながら、経済社会活動の再開に当たっては、決して、楽観的になることなく、慎重に状況を見極めなければなりません。感染が再拡大した場合には、国民の理解を丁寧に求めつつ、行動制限の強化を含め、機動的に対応します。
五 未来社会を切り拓く「新しい資本主義」
新型コロナによる危機を乗り越えた先に私が目指すのは、「新しい資本主義」の実現です。
人類が生み出した資本主義は、効率性や、起業家精神、活力を生み、長きにわたり、世界経済の繁栄をもたらしてきました。
しかし、1980年代以降、世界の主流となった、市場や競争に任せれば、全てがうまくいく、という新自由主義的な考えは、世界経済の成長の原動力となった反面、多くの弊害も生みました。
市場に依存し過ぎたことで、格差や貧困が拡大し、また、自然に負荷をかけ過ぎたことで、気候変動問題が深刻化しました。
これ以上問題を放置することはできない。米国の「ビルド・バック・ベター」、欧州の「次世代EU」など、世界では、弊害を是正しながら、更に力強く成長するための、新たな資本主義モデルの模索が始まっています。
我が国としても、成長も、分配も実現する「新しい資本主義」を具体化します。世界、そして時代が直面する挑戦を先導していきます。
日本ならできる、いや、日本だからできる。
我々には、協働・絆を重んじる伝統や文化、三方良しの精神などを、古来より育んできた歴史があります。だからこそ、人がしっかりと評価され、報われる、人に温かい資本主義を作れるのです。
皆さん。明治維新、戦後高度成長、日本は幾多の奇跡を実現してきました。「新しい資本主義」という、 数世代に一度の歴史的挑戦においても、日本の底力を示そうではありませんか。
▶4ページ目 六 新しい資本主義の下での成長へ続く
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