見せる!時間、空間 変容の美 浦和区の2美術館が「タイガー立石展」共催

2021年12月4日 07時49分

県立近代美術館での展示風景

 ジャンルを超えてアバンギャルドな表現活動を続けたアーティスト、タイガー立石さん(一九四一〜九八年、本名立石紘一)の仕事を一望できる「大・タイガー立石展 世界を描きつくせ!」が県立近代美術館と、うらわ美術館(いずれもさいたま市浦和区)で同時開催されている。両館合わせて五百点超の圧倒的作品数で作家の生涯を振り返る。来年一月十六日まで。(前田朋子)
 現在の福岡県田川市で生まれた立石さんは、美大進学後にポップアートで注目を浴びるも、少年時代から好んだ漫画家に転身。ナンセンスギャグで成功を収めるが、「これ以上やると深みにはまる」と突如イタリアへ渡った。絵画やイラストで大成功を収めながらも安住せず帰国し、新たに挑戦した絵本が高く評価された。九〇年には「立石大河亞」と改名。立体制作にも取り組み、病を得て五十六歳で亡くなった。
 作品は緻密な画力と構成力を背景に、繰り返し描かれるトラと富士山など強い特徴がある。時間や空間の変容を描くのが得意で、一枚絵でも残像やコマ割りで時の流れを表現。長さが五十四メートルもある「水の巻」(一九九二年)は自身が見たものや、過去作、他者の作品まで織り込んで描き尽くした大作だ。
 手掛けたどのジャンルでも傑出し、簡潔に紹介できないところが魅力といい、県立近代美術館の平野到(いたる)学芸員は「自分と他人の区別をご破算にして融合するのが得意」と作家の特徴を表現する。近年は国内外の若いクリエーターからも注目され、海外の雑誌社などから作品掲載の依頼が遺族のもとに寄せられるという。
 両館がともに作品を所蔵し、立石夫人が両館をよく訪れるなどの縁もあって企画され、共同開催が実現した。県立近代美術館では画業の全体像を、うらわ美術館では漫画と絵本に焦点を当てて展示する。「とら割」として、両館観覧者には二館目を二百円割引する。

「百虎奇行」(1989年、田川市美術館)S

「汝、多くの他者たち」(1964年、千葉市美術館)S

「Cubic Worlds」(1973年、うらわ美術館、県立近代美術館)U、S

※末尾のUはうらわ美術館、Sは県立近代美術館での展示。両方あるのは両館で展示

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