「オマーンはイランの命綱」 米制裁下で経済支える「中東のスイス」

2021年12月5日 06時00分
オマーンの首都マスカットにある市場にはイラン産の新鮮な野菜が並ぶ=いずれも11月中旬

オマーンの首都マスカットにある市場にはイラン産の新鮮な野菜が並ぶ=いずれも11月中旬

  • オマーンの首都マスカットにある市場にはイラン産の新鮮な野菜が並ぶ=いずれも11月中旬
  • オマーンの首都マスカットにある市場に到着したイラン産の野菜を届ける冷蔵トレーラー
  • オマーンの首都マスカットにある市場で、冷蔵トレーラー(左)から運び出されたイラン産の野菜を整理する人たち
  • オマーンの首都マスカットにある港に向かう大型船。沖合にはコンテナ船も停泊していた
  • オマーンの首都マスカットで、イランから輸入した蜂蜜とアサディさん
<「中東のスイス」で生きる オマーンを選んだイラン人(上)>
 オマーンの首都マスカットにあるアルマウェイラ市場は、空が明るくなるころ「戦争のような忙しさ」を迎える。毎朝イラン産の野菜や果物を積んだ冷蔵トレーラーが次々とやって来るからだ。新鮮なリンゴや季節の野菜はオマーンでも人気が高い。
 「航路の発達がイラン貿易を劇的に変えた。野菜の鮮度が全く違う」。にぎわう市場を見て、青果輸入業を20年営むイラン人のモハンマドアリ・ジャファリさん(50)が満足げな表情を見せた。かつては数日かかった輸送時間も、12時間で結ぶ航路ができたことで大幅に短縮された。

◆貿易航路5本新設 オマーン側も港を整備

 2018年に米国が対イラン経済制裁を再開してから、イランと関係が良好なオマーンを結ぶ貿易航路は5本新設された。今では新設分を合わせて10本近い航路が米制裁であえぐイラン国内経済を支える。イラン商工会議所によると、イランの対オマーン輸出は、今年3月~9月で前年同期比67%増の2億7700万ドル(約313億円)で、イランにとって「オマーンはまさに命綱」(ジャファリさん)だ。
 オマーン政府も港の整備を進めて輸送をサポートする。貨物船用大型エックス線装置を導入し、積み荷の検査を簡略化。貿易会社側は積み荷を載せたトレーラーごとイランから運ぶことで、到着後の素早い配達が可能になった。

◆オマーンで起業するイラン人たち

 米国の経済制裁再開は、オマーンで起業するイラン人も増やした。オマーンはアラブ首長国連邦(UAE)のドバイと比べ、イラン人の就労ビザ取得が簡単な上、倉庫などの賃料も安く、少ない資本金で起業できる。貿易会社は市場周辺だけで300社近くに増え、マスカット郊外にできた貿易地区には新興の中小貿易会社が倉庫を並べる。
 3年前に貿易会社を立ち上げたアサディさん(30)の倉庫には、イラン産の住宅建材やキッチン用品、ろうそくからプラスチック製のごみ箱まで、多くの製品が保管されている。最近は蜂蜜の輸入も始めたといい、「制裁対象外のものなら、どんなものでも取り寄せられる」と話す。
 「米制裁が解除されて鉄や銅、石油の輸出が始まれば、もっと大きなビジネスチャンスがやってくる」。現在、ウィーンではイランと米国が制裁解除などを巡って間接協議を続けている。見通しは立っていないが、すでに制裁解除を見据えた動きは始まっている。(マスカットで、蜘手美鶴、写真も)
   ◇   ◇
 親米ながらイランとも良好な関係を維持する全方位外交で「中東のスイス」とも呼ばれるオマーン。米国がイランへの経済制裁を再開させた18年以降、ビジネスチャンスを求めてペルシャ湾対岸から移住するイラン人が増え、両国間をつなぐ貿易航路も増えた。オマーンの首都マスカットでビジネスチャンスをつかもうとするイラン人に迫った。

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