NHK大河ドラマ「青天を衝け」クライマックスへ 吉沢亮、栄一の役 染み込んだ

2021年12月5日 07時22分
 主に明治、大正期に活躍した実業家・渋沢栄一(1840〜1931年)の生涯を描くNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の放送が大詰めを迎えている。最終回(26日)は目前。近現代大河が苦戦するといわれる視聴率は悪くない。物語の2本柱である栄一役の吉沢亮(27)と、15代将軍徳川慶喜を演じる草彅剛(47)の存在が一因とみられるほか、識者は制作側の仕掛けの奏功もあるとみる。 (上田融)
 栄一と慶喜。その関係は家臣と一橋家当主に始まり、変化しながら慶喜の晩年まで交流が続く。二人の場面の撮影について吉沢は言う。「慶喜と栄一の関係ではないが、僕は草彅さんに対して緊張感がある。でも、その緊張感がほどよく芝居に乗っていた」
 緊張の理由は草彅の芝居にあった。「草彅さんの芝居のプランが全く分からなかった。現場に入ったら、そこに慶喜がいるだけでした」。心が揺さぶられる感じがあった。
 「すごくいい方向に引っ張ってもらえた。相談して作り上げるのではなく、その場で出てくる生のものをお互いに拾い上げて、キャッチボールするような空気感だった」と振り返る。

5日放送の「青天を衝け」から。右が吉沢亮

 十一月八日の撮影終了まで一年四カ月、主演として走り続けた。「めちゃくちゃおしゃべりな役ではあるが、とんでもない量のセリフを短期間で覚えて一気に消費する繰り返しだった。追い詰められながら、クオリティーのいいものを出し続けるという役者の基礎を鍛えられました」
 連れ添った妻の千代(橋本愛)との死別は、撮影で号泣した。「他の人の死は悲しかったが、その人の人生の美しさとか栄一なりに前向きに消化できた。でも、お千代の死は苦しさしかなかった」と明かす。
 悲しみも味わいながら、九十一歳まで演じた。話す速度や声質、振り返る時の体の動き…一つ一つ細かく造形した。「栄一は、いい意味で最後まで空回りする姿勢は変わらず、熱量は落ちない。(数々の)功績が生まれる瞬間が描かれていて、(視聴者も)親しみやすいのでは」。最終盤の見どころをそう語る。
 何もしなくても栄一として立っていられるほど、役が染み込んでいるという。「長くいろんな年代の栄一を演じてきたので、等身大の二十七歳を忘れている気がする。芝居をする上で一気に老けたりしないかな」と冗談を口にした。

◆慶喜・草彅剛 2人の空気感できた

 「亮君とは(役を離れて)話すことはほとんどなかった。しゃべらずとも会話している感じがした」。草彅は振り返る。
 例えば、栄一が使節団の一員として渡ったパリからの帰国後、将軍を退いた慶喜が拠点とした静岡に報告に訪れたシーン。「長く撮影してきたので、二人の空気感ができていた」。吉沢と同様、当人同士でしか分からない間合いがあったと明かした。
 「歴史に興味ないので」と時代背景などを調べることはなかったそう。難しいキャラクターを作り上げる努力を語らないばかりか、自身の出演部分以外は台本も「読んでいない」とも。慶喜像は「どこかミステリアスでつかみどころがない存在だが、寂しげではかなく、でも男らしい」と分析して造形したという。
 「一線を退き、枯れていく哀愁の中で、栄一と過ごした輝かしい日々を感じている」。隠居後の慶喜のたたずまいはそうイメージした。「自分の思いや、すべてのものを栄一に託したのかもしれない」と最後の将軍の心境を推し量った。
 今回の大河では「吉沢亮というすばらしい役者と一緒に芝居できたこと」が最も楽しかったという。「近くにいられたことで活力になり、次(の仕事)へのエネルギーになった」とたたえた。

◆視聴率 手堅く推移か

 「青天を衝け」は、前作「麒麟(きりん)がくる」が新型コロナウイルスの影響で収録・放送が延びたため初回放送が二月十四日になり、東京五輪・パラリンピック開催による休止もあって放送は計四十一回に。悪条件が重なったが、初回の世帯平均視聴率は20・0%と好発進。直近の十一月二十八日も下降はしているが、12・0%を記録した。(ビデオリサーチ調べ、関東地区)
 幕末・明治以降の近現代を舞台にした二〇〇〇年以降の大河の平均視聴率は、「篤姫」が最も高く、「龍馬伝」が続く。「青天−」の数字は前述の作品には及ばないとみられるが、「西郷どん」「花燃ゆ」などと比べて高めに推移している可能性もある。

◆大河の新潮流感じる コラムニスト・桧山珠美 

 辛口のコラムニスト桧山珠美に、人気の理由などを分析してもらった。
 ◇ 
 スタートが遅く、(オリパラによる)中抜けもあった逆境の中、うまく盛り上げた脚本のうまさが光る。渋沢の成長と、吉沢亮の演技の成長がうまくリンクした。千代役の橋本愛らも仲の良いファミリー像を見せ、千代がコレラで亡くなる様子はコロナ禍にかぶせて理解しやすくしていた。
 脇の使い方もうまい。朝ドラ「あさが来た」で五代友厚を演じたディーン・フジオカを同じ役で使う仕掛けは、なかなか商売上手。土方歳三役の町田啓太、渋沢平九郎役の岡田健史らイケメンの若手で歴女の心をつかむ「キラキラ大河」の側面も見せた。栄一の浮気は「千代が許可した」という女性主導に仕上げ、炎上リスクを抑えたと思う。
 今回の大河は、女性や子どもが親しみやすい味付けで新しい潮流を感じる。世間の「新1万円札の人」に対する愛着は相当上がり、「国家プロジェクト」の意味でも成功だったのではないか。 (談)

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