生誕120年 丸木位里の軌跡たどる 東松山の美術館で企画展 初公開の7点も

2021年12月5日 07時26分

「丸木位里は晩年まで精力的に大作を描いた」と話す学芸員の後藤秀聖さん=東松山市の原爆の図丸木美術館で

 原爆の惨禍を描いた連作絵画「原爆の図」で知られる日本画家・丸木位里(いり)(一九〇一〜九五年)の生誕から、今年は百二十年にあたる。「原爆の図」は妻の俊(とし)との合作だが、東松山市の原爆の図丸木美術館では、丸木個人の制作にスポットを当てた企画展「丸木位里展 実験の軌跡をたどる」を開催している。東洋伝統の水墨画にこだわり、前衛的な表現技法に挑戦し続けた姿を紹介している。(飯田樹与)
 戦前・戦中の初期から晩年に至るまでの二十九点が展示されている。「南瓜(かぼちゃ)と栗」のように対象を緻密に描いた作品や、点描やにじみ、墨流しなどの技法を用いて風景や生物を抽象的に表現した作品などが並ぶ。妻の俊や紅梅などを題材にした七点は、近年の調査研究で存在が明らかになったもので、初めて公開されている。
 「原爆の図」のベースとなった人体デッサンもある。一般的に使われるコンテやペンのほか、墨を使ったデッサンもあり、学芸員の後藤秀聖さんは「いろんなことを試し、表現の引き出しを多く持った人」と解説する。常設展示の「原爆の図」や「アウシュビッツの図」「水俣の図」など俊との共同作品にも、その実験的な表現技法が生かされているという。

墨で描かれた「原爆の図デッサン」

公害取材で訪れた水俣を描いた「不知火海」(いずれも原爆の図丸木美術館提供)

 後藤さんは「墨の表現を追求し続けた丸木位里の作品は、古さを感じさせない。今の現代作家にも引けを取らない。個人制作にも注目してほしい」と話した。
 企画展は来年一月三十日まで。また、今年は明治天皇暗殺を企てたとして幸徳秋水ら社会主義者が弾圧された「大逆事件」から百十年の節目でもあるとして、同事件を題材にした丸木夫妻の大作も四年ぶりに公開している。

関連キーワード


おすすめ情報

埼玉の新着

記事一覧