[イルミネーション] 愛知県瀬戸市 吉田さをり(61)
2021年12月5日 07時39分
◆わたしの絵本
◆300文字小説 川又千秋監修
[小さな郵便屋さん] 名古屋市北区・パート・43歳 後藤結香子
いつもの散歩道に小さな公園があり、私はいつもベンチで道草をする。
毎日の当たり前にうんざりし、ため息をついていた。その時、私の目の前に小さな女の子がやってきて、
「ぴんぽーん! 郵便でーす。お手紙どうぞ」と落ち葉を渡してくれた。
「ありがとう。誰からのお手紙ですか?」
「うさぎさんからです」
「あら、なんて書いてあるのかな」
「えーっと、『すきなときに、おもいっきりジャンプしていいよ』って書いてあります」
「ありがとう。さっそくお返事書きますね」
女の子はにっこり笑い、お母さんの所へ帰って行った。
さっきまでうんざりしていた心が一気に晴れ、私はその場で、おもいっきりジャンプした。
<評> 落ち葉舞い散る公園の片隅で、寒々しい現実と温かな童話の世界が優しく溶け合って、何だか、思いっきり気分が晴れる一作です。またの出会いでは、どんな手紙を届けてもらえるでしょう?
[ゴールの先に] 金沢市・公務員・32歳 水上慎也
ハー、ハー、呼吸が荒くなる。
「何で、こんなに苦しい思いをしなければならないのだろうか。今ここで諦めると、どれだけ楽だろうか」
こんなことばかりが頭の中を駆け巡る。フルマラソンを始めてはや五年、大会の度に同じことを考える。
辞退する勇気がなく、「あと少し、あと少し」と言い聞かせている自分がいる。
そんなことばかり考えているうちに一時間が過ぎた。
沿道の観客の数が増え、声援が大きくなってくるとゴールはすぐそこだ。
動かない足を懸命に動かし、無事ゴール。
ゴールテープを切ることで、足を動かし続けることから解放された。
それと同時に、諦めずやりきれた達成感。
やっぱりこれじゃ、まだまだやめられないな。
<評> フルマラソン完走は、市民ランナーの夢。数時間に及ぶ、自分との闘いに打ち勝てば、疲労を打ち消すだけの大きな自信が育ちます。その先で待っているのは、やはり次なるスタートライン!
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